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気象学最後の謎が、巨大なビジネスチャンスに。超高精度に風を測る京大発テックベンチャーの躍進
2021.06.08

IT&ビジネスコラム第9回

気象学最後の謎が、巨大なビジネスチャンスに。超高精度に風を測る京大発テックベンチャーの躍進

著者 Bizコンパス編集部

※本記事は2020年9月25日にNewsPicksに掲載された記事です。

 周囲約10kmの風の動きを、簡便にスキャニングできる技術。

 そんなテクノロジー、世にいう「DeepTech」を開発できたとしたら、あなたはどんなビジネスが思い浮かぶだろうか。

 2015年に創業した京都大学発のテクノロジーベンチャー、メトロウェザーでは、「ドップラーライダー」という計測機器を超高精度に進化させ、世界を目指そうとしている。

 まず狙うのは、ドローン市場。2018年のドローン世界市場規模は、軍用需要と民生需要を合わせて約1.6兆円。2025年には世界で約2.9兆円へと達する見込みだ。

 ドローンの他にも、航空産業、風力発電、都市防災など、需要の芽がいくつもあるという。

 2018年には2.2億円の資金調達。出資したのは、リアルテックファンド、ドローンファンドなどテック系のファンドである。この資金調達時に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による助成事業にも採択されている。

 2019年に始まったNTTコミュニケーションズのオープンイノベーションプログラムでは、共創パートナーとして6社のうちの1社として採択され、ピッチでは「オーディエンス賞」と「審査員特別賞」のダブル受賞となった。

 「ないなら、(自分たちで)作ればいいと言われて、センセ(助教/現共同創業者)ぶっ飛びすぎやろって(笑)」

 メトロウェザー代表、東邦昭氏に話を訊くと、そんな素朴な答えが返ってきた。

2009年に京都大学のポスドクに着任後、大気レーダーを用いた乱気流検出・予測技術の開発、高分解能気象予測シミュレーションの開発を行う。民間気象予報会社において2年間の環境アセスメントの実務経験も持つ。2014年にポスドクを辞めた後、1年間の起業準備期間を経て、2015年に古本淳一とともに京都大学発スタートアップとしてメトロウェザーを設立。代表取締役。神戸大学博士(理学)・気象予報士。

 大きな期待を背負った新進気鋭のテクノロジーベンチャーの代表は、デジタルサービスのベンチャーとはまるで違う柔和な語り口ながらしかし、研究者としての覚悟を秘めていた。

 「思えば、ずっと風を測ってきた」と語る東に、テクノロジーベンチャー躍進の軌跡を聞いた。

 後半では、メトロウェザーと業務提携契約を締結し、野心的なプロジェクトの相棒を務める、NTTコミュニケーションズ株式会社の平川裕樹氏に、大企業とベンチャーの密な関係について話を聞いた。

 インターネット、スマホ、SNS、Zoom、5G……テクノロジーの進化によって、社会はどんどん繋がっていきます。人と人、人と社会との距離を超えながら、いかによりよい未来を創っていけるのかを探る大型連載「Change Distance.」。コミュニケーションの変革をリードするNTTコミュニケーションズの提供でお届けします。

風を捉えて産業に活かす。京大発ベンチャーの挑戦

──メトロウェザーの技術について、まずは教えてください。

東邦昭(以下、東) 我々のまわりに吹く「風」の可視化です。そのために、風向や風速などの風の情報を測定する「ドップラーライダー」という機器を開発しています。

──リリースには、「高精度風況観測を提供する超高分解能ドップラーライダー」とあります。ドップラーライダーという機器自体が、オリジナルということでしょうか。

東 いえ、ドップラーライダー自体は存在しました。でも、従来のものは一長一短というか、僕たちが計測したい風をうまく捉えられなかったんです。

 例えば、小型のドップラーライダーは、5km以下の狭い範囲しか測定できない。一方、大型のドップラーライダーは数十km先まで観測できるけれど、貨物列車のコンテナくらいの大きさがあったんです。もともとは軍事用途や空港での運用を考えて作られたものなので。

 そこで、我々はドップラーライダーの小型化・高精度化に挑戦しました。今年の5月に完成したメトロウェザーのドップラーライダーは、1m四方と小型なのに数十km先の風向や風速も測定できます。今後は、さらに小型化した60cm四方のドップラーライダーを発表する予定です。ここまで小さくすれば、ビルの屋上や基地局などさまざまなところに設置できます。

──なぜそのようなことができたのでしょうか。

 高精度化に一役買っているのが、京大の研究室で培ってきた信号処理のノウハウです。従来のドップラーライダーでは、数km以上先の風はノイズが邪魔をして測定できませんでした。でも、メトロウェザーは独自の信号処理でノイズを取り除くことにより、10km以上先の微弱な風のシグナルも的確に捉えます。

──取得した風況データは、どういった分野で利活用できるのでしょうか。

東 みなさんがイメージしやすいところでは都市防災ですね。ドップラーライダーで風を把握できれば、列車の運行を止めるような強風やゲリラ豪雨をもたらす雲の発生を予測することが可能になります。雲ができる前には必ず風が集まるんです。その風を測れたら、ゲリラ豪雨をもたらす入道雲の卵が見つけられるはずです。

 じつは、そこから社名もつけました。「メトロ」は「都市」、「ウェザー」は「気象」。都市の風況を把握し、安全を守るという意味を込めています。

──他にニーズがありそうな分野は?

東 風力発電ですね。洋上風力発電所の建設場所を決めるのに、どこにどのくらいの強さの風が吹いているかを計測して割り出すことが必要なんです。あとは、航空産業。航空機の後方乱気流を検出して事故を防ぐ、という活用法もあります。

 3年ほど前からは、ドローンを飛ばすために風況を知りたいというニーズも出てきました。ドップラーライダーのデータを活用して、ビル風や突風を回避するルートを検索できればドローンの墜落を防げます。ドローン産業の分野は、今後大きな成長が見込めると考えています。

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