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気象学最後の謎が、巨大なビジネスチャンスに。超高精度に風を測る京大発テックベンチャーの躍進
2021.06.08

IT&ビジネスコラム第9回

気象学最後の謎が、巨大なビジネスチャンスに。超高精度に風を測る京大発テックベンチャーの躍進

著者 Bizコンパス編集部

地表面に近い風は、気象学的に謎のままだった

──東さんは気象予報士の資格もお持ちですよね。そもそも大学の研究から、どのように起業に至ったのでしょうか。

東 学部や院のときは、線状降水帯という集中豪雨の研究をしていたんです。博士号をとってから、2009年にポスドクとして京都大学の古本淳一先生の生存圏研究所(生存圏研究所大気圏精測診断分野)に入りました。古本とは、後にメトロウェザーを一緒に創業することになります。

 古本の研究室は、気象レーダーを用いて大気を測る研究をしていました。そこで僕は、シミュレーションで風を捉えて予測することに挑戦していたんです。

 そもそも、風って歴史的に上空から明らかになっていって、地表に近いところのほうが、よくわかっていないんですよ。

──地表に近いほうが観測しやすそうなのに。

東 おもしろいですよね。歴史的に大気の流れは、上のほうから解き明かされてます。

 航空機が飛ぶ約8000~1万2000mの風の研究は、1950〜1960年代にかなり進みました。上空は障害物がないから、1点で測ると100km、200km先もだいたい同じ風が吹いているんです。つまり広範囲の把握でも意味があります。

 一方で、地表に近い高さの風は、建造物の影響を受けるのでとにかく複雑です。1点の計測値でまわりの状況が把握できるというものではありません。測定するすべがなく、シミュレーションしても本当のところがわからないまま。人間の生活に密接している部分なのに、そこが一番気象学的には謎だったんです。

──おもしろいですね。それをなんとか明らかにしようとしていた。

東 生存圏研究所では、滋賀県甲賀市に野球場1個分くらいある巨大なレーダーを設置していたんです。ここで大気を観測していました。滋賀県のJR湖西線は、「比良おろし」と呼ばれる比良山地からの強風に悩まされていて、冬場はダイヤがよく乱れていました。その風を測定できないか試みたりしていたんです。

 でもレーダーつまり、電波で風を測定するのは難しいんですよ。2014年にいよいよ研究が行き詰まってきたとき、古本が「電波はあかん。光や」と言ったんです。それで、既成のドップラーライダーを使ってみることにしました。

 ドップラーライダーの原理は、レーザー光を発射して大気中のエアロゾル(大気塵、ごく小さな浮遊粒子)からの光を受信し、その信号周波数成分を解析して、エアロゾルの移動速度、つまり風速を計測するというものです。エアロゾルがある速度で移動していると、発射したときの周波数と戻ってきたときの周波数が異なる。そのドップラー効果を利用していることから、「ドップラーライダー」という名前がついています。

──大気中には常に塵が飛んでいるんですか?

東 良い質問ですね。基本的に飛んでいます。大気汚染などがなくても、目に見えないくらいの大きさの塵はある。でも、台風が去った直後だけは空気が澄んでいて、塵が少なくなります。それも、数時間したら元に戻りますよ。

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