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経済効率化を目指さない生き方へ。スマートシティに宿る「人間の可能性」【The UPDATE特別版ダイジェスト】
2021.06.03

IT&ビジネスコラム第8回

経済効率化を目指さない生き方へ。スマートシティに宿る「人間の可能性」【The UPDATE特別版ダイジェスト】

“スマート”とはいったい何なのか?

葉村 私がフリップに書いた「法人の都市から個人の都市へ」なんですけど、実は、建築家の故・黒川紀章さんの著書『都市デザイン』にある言葉なんです。

葉村 黒川さんは、産業革命以降は「企業の効率化」を実現するものだった都市が、21世紀は人間のためのものになっていくべきだと語っています。

 それを実現できるテクノロジーが今ようやくそろった。そこで、どうするかなんです。単純にテクノロジーを実装すればいいという話ではなくて、テクノロジーに使われない、人間中心の形に作り変えていくということです。

隈 僕らの大先輩である黒川さんは、非定住的なものっていうのを夢見て、例えば70年代の「中銀カプセルタワービル」みたいな新しい非定住を考えていた人。

 その夢を実現できなくて、悔しい思いをしてたのを僕は脇で見ていたから、ここで違うステップにいけたら、当の意味でスマートかなって感じるんですよね。

黒川氏の代表作であり、世界初のカプセル型集合住宅。設計上はカプセル状の部屋の交換が可能だが、実際には部分的な入れ替えが困難なため、竣工した1972年以来一度も交換されたことがない(Jordy Meow, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons)

佐々木紀彦(以下、佐々木) 隈さんはシェアハウスを経営されていますが、それも非定住化の1つということですか?

隈 うん、シェアハウスはすごく重要な武器ですね。

隈 建築の“単位”って、事務所や個人住宅に限定されてきたけど、今はそれを壊す最高のチャンス。いろいろなシェアの形でゆるくつながれる。

 スマートシティって、何か大きなものがドーンとあるんじゃなくて、そういうゆるやかな変化が都市全体で起こることで実現していくものなんじゃないかな、と。

 私たちは、人間の効率性は箱の中にあると思い込んできましたが、それって実はストレスばかりでまったく効率的じゃない。

 むしろヤギが脇にいるような暮らしのほうが、いろいろなことができるし、効率的かもしれない(笑)。

林 そもそも“スマート”の定義って、ちょっとふわっとしていて、みんな別々のことを考えていますよね。

奥井 そうですね。「スマートシティ」って、いつからある言葉なんでしょう?

栗山 10年くらい前から言われ始めていますが、この1年ほどで猛烈なブームになってきている。コロナ禍で「これは使えるぞ」とますます加速している印象です。

 今世紀最大、人類史上最大ともいえる課題は「都市化」と「高齢化」ですよね。都市に人口が集中しすぎてしまい、さらに高齢化で社会保障も機能しなくなりつつある。

 そこにブレイクスルーを与えようとしているのが、スマートシティです。

栗山 そんなスマートシティの“スマート”とは何かというと、「個人の選択肢の広がり」と「自然との共生」の2つだと私は捉えています。

 自動車に乗れば歩きもする。便利と不便が共存する中で、そんなふうに個人の「選択」の幅を広げられること。そして、エネルギー効率を高めて自然資産をうまく使いながら、これまで征服してきた自然と「共生」すること。この組み合わせが、スマートの意義だろう、と。

 つまり、スマートモビリティだったりスマートエネルギーだったりスマートビルディングだったりと、これまではいろいろな“スマート”が別々に存在していた。

 テクノロジーが進歩して、それらを横串でつなげられる準備が整い、「選択」と「共生」が実現しやすくなったのが、今なんだと思います。

古坂 そうか。今まで縦割りだったものを、並べて刺してみようというのがスマートシティなわけですね。

古坂 じゃあ、そのスマートシティに欠かせない技術って何でしょう?

栗山 デジタルサービスやデータマネジメント、AIです……とかって、うちの会社的には言わなきゃいけないところなんですけど(笑)。

 もちろん、そういう技術も大事なんですが、最も重要なのは「リベラルアーツ」だと思っていて。

栗山 技術は常に最先端のものを使うしかない。でも、そこには必ず限界や制約があります。

 えば、飛行機や自動車に乗れば事故が起こるかもしれない。それでも、制約を超えて「このテクノロジーを使っていけば、未来はもっと開けるはずだ」と信じられるかどうか。

 そう思えるようになるには、メカニカルアーツではなくて、リベラルアーツ(※)が必要です。そういう心理学的、哲学的な部分を、事業者や消費者も含めた社会全体で共有していかなくてはいけない。

※古代ギリシャ・ローマ時代に起源を持ち、哲学の基礎として「人が持つ必要がある技芸の基本」と見なされた自由七科のこと。「教養を高める教育」を指し、自由かつ創造的な精神・知性を形成する手法とされる。

葉村 我々はこれまで歴史上、さまざまな課題を人間の知恵で解決してきました。

 例えば都市の中で、法律を作ったり貨幣を生み出したり。人間の知恵が新しい概念を生み出すときには、同時に新たなリベラルアーツ的な考え方が必要になってきますよね。

古坂 なんだか、だんだん冒頭で林さんの言っていた「人間がどうスマートになるか」みたいな話に、つながってきましたね。

林 結局は、「どう変わっていくか」ではなく、僕たちが「どう変えていくか」なんですよね。

 だから僕は、これからスマートシティというテクノロジーを介して、コミュニティや共同体をリデザインしたいと思うんです。

 さっき隈さんもおっしゃったような、いわゆる家とか家族の“単位”が随分と固定化されてしまった。でも、平均世帯人数は減る一方で、地域や血縁のつながりも薄れていっている。

 そうした状況で、例えばデータやセンシング機能を活用すれば「誰が何に困っているのか」「お互いがどう貢献できるか」を可視化して結びつけることもできますよね。

林 すると、消費の媒介としての貨幣ではなくて、贈与を贈り合うというか、感謝の気持ちを表すために、コミュニティ内のトークンみたいなものを発行する。そんなふうに、究極的には経済の仕組みまで変えられると思うんですよ。

「ありがとう」のやり取りがどんどん循環して、周りには虫も動物もいっぱいいる。そういう街を僕はつくりたいですね。

古坂 お年玉をあげて、お返しで芋とか米をあげましょうっていう、田舎の感じを思い出すなあ。林さんのスマートシティは、田舎と都市の共生なんですね。

林 そうですね。テクノロジーで、もっと大きなコミュニティでそういうことが実現できるようになりましたから。

※この記事はNews Picksから配信されています。

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