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デザイン思考だけじゃ「企業変革」はできないのか
2021.06.01

IT&ビジネスコラム第7回

デザイン思考だけじゃ「企業変革」はできないのか

著者 NewsPicks BrandDesign

ユーザーに愛されるかではなく、いかにユーザーを愛するか

──KOELとKESIKIが掲げているミッションを見ると、双方に「愛される」という言葉が使われています。意外とこういったところにもデザインの奥深さがある気がするのですが、ビジネスのミッションに「愛される」を含めたのには、どういう意図があったのでしょうか。

井上 おもしろいですね。これは冒頭にお話しした内容の繰り返しになりますが、ユーザーを単なる「数字」として扱うのではなく、その姿をきちんと理解して、少しでも良い方向へ導く手伝いをしようとする行為こそ、ひとつの「愛」なのではと考えます。

 「愛」という言葉はロマンチックな響きですが、ドライにビジネスを考える上でも必須の要素でもあります。

 いま、世の中がたくさんの選択肢で満たされているなかで「愛されるブランド」になるには、「このサービスを使っている自分を好きになれる」とか「その企業の哲学をリスペクトできる」とか、ユーザーの感情の起伏までをデザインする必要があります。

 中長期的に生き抜くために、自分たちが本当に「愛される」存在たりうるかを、真剣に考えないといけない。

金 わかります。スイッチングコストが下がっていますから、単純にニーズを満たすだけでは埋没してしまいますよね。

 ユーザーが何に悩むのかを理解して、それに対してどういうアプローチができるのかを考え抜き、試行錯誤を繰り返す。そこまでやりきれてこそ選んでいただける存在になるわけで、突き詰めれば“ユーザーを愛さないと、ユーザーに愛されない”といえます。

 「愛される」という言葉がミッションに入っているのも、その実現のために「愛すること」、言わばカスタマーサクセスを約束しているからです。

 「愛」については、エーリッヒ・フロムも『愛するということ』の中で、「いかに愛されるかではなく、いかに愛するか」と書いていますね。それって、デザイン思考そのものの話でもあるんです。

──デザイン思考と「愛」がそこでつながるんですね。

金 『愛するということ』には、デザイン思考の技術面についても語られてますよ。相手のことを配慮する、愛することに責任を持つ、相手のことをよく知る……。

井上 まったくもって、デザイン思考に出てくるキーワードそのものですね。

金 フロムによれば、「愛すること」とは相手と将来どうなりたいかビジョンを持ち、自分も軸を持ったうえで接すること、だそうです。

 デザイン思考も根底は同じで、ユーザーと一緒にどういう状態を作りたいかビジョンを持ち、自分たちの信条を持ったうえでプロダクトを提供する行為といえるでしょう。

 さらに言うなら、「愛すること」は社内にも言えます。組織や役職を超え、お互いをわかり合うことで、共に高めながら試行錯誤できるチームがそこかしこで生まれ、やがて企業体全体が変わっていく。企業が変わることが求められる今、それこそがとても大きな課題なのだろうと思います。

井上 金さんが向き合ってきた課題解決の実践こそが、変革のリアリティですね。

(構成:井上マサキ 撮影:吉田和生 デザイン:堤香菜 編集:中島洋一)

※本記事はNewsPicksに掲載された記事です。

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