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【太田直樹✕藤井保文】謎ワード「スマートシティ」をリードするプレイヤーは誰か?
2021.04.22

IT&ビジネスコラム第3回

【太田直樹✕藤井保文】謎ワード「スマートシティ」をリードするプレイヤーは誰か?

著者 NewsPicks BrandDesign

重要度を増すデータ・ポリシー

──今年5月、Alphabet(Google親会社)傘下のSidewalkが、カナダのトロントで進めていたスマートシティ計画から撤退しました。

 データプライバシーに関する地元住民との交渉決裂が理由とされています。データ活用のポリシーは重要な観点だと思いますが、その点はいかがですか。

藤井 例えば中国のデータ活用を見ていて、特徴的だなと思う点は、官民でデータの統合範囲をはっきりと棲み分けているところです。

 例えば、宿泊や交通機関の利用といった移動のデータは、すべて当局に把握されています。

 一方で、購買や娯楽などのデータまで、国が一元管理しているかというとそうでもない。そういった消費行動のデータは、アリババとかテンセントのような企業が自由にコントロールしているんです。なぜかといえば、そのほうがデータ活用のPDCAを早く回せて、イノベーションが生まれやすいからです。

 中国政府が、有事に民間企業のデータを使用することができるとしても、実際にすべてのデータを管理しているわけではなさそうです。経済発展の観点で、市場の発展を抑制しないように、官民でデータ活用のバランスを上手にとっている点は、学ぶべきところかなと思います。

太田 私は「データは個人のもの」という考えに基づいて、経済的な付加価値を持たせる企業が出てきたらおもしろいと思っています。いわゆる「データ・ポータビリティ」を実践する会社ですね。

──「データ・ポータビリティ」とはどのようなものでしょうか。

太田 何らかのサービスを利用した時の個人データを、自身で管理して、別のサービスを使う時にも再利用できるようにするというものです。

 例えば日本だと、小中高と12年間教育を受けても、生徒自身が学校からもらうデータって、基本的に成績表くらい。病院に行けば、過去の病歴とか服薬歴を患者が聞かれたりする。そんなのは細かく覚えていない人も多いわけです。

 そういうデータは今の時代、学校や病院にはデジタルで残っているのに、ユーザーに還元しようとしない。それを開放するのがデータ・ポータビリティです。

 一例として、EUでは、2018年に「一般データ保護規則」(GDPR)が施行されました。企業が個人データのポリシーを遵守しないと罰せられるというものです。

 その中の「データ・ポータビリティ権」に基づいて、EUの一部では「DECODE」というプロジェクトが進行中です。ひとことで言えば、GAFAなどが保有するデータを個人に取り戻すために、インターネット環境を再構築する取り組みです。

 データ・ポータビリティが実現すれば、データの流動性が高まるので、より活用できるようになっていく。そこにチャレンジする企業が現れたらいいな、と。

政府・企業・市民キープレイヤーは誰か?

──DXの対象規模が大きくなるにつれて、民間企業の主導も難しく、国家主導型のトップダウンを期待してしまいますが、実際には思うように進まない現実がある。ではこれから、誰がキープレイヤーになっていくと思いますか。

太田 そうですね。停滞したDXの穴を埋めるようなスタートアップが台頭すると良いと思っています。

 日本に関して言えば、行政のデジタル化の遅れで、少なく見積もっても5兆円の機会損失があると言われています。逆に言えば、損失が大きい分だけ、大きなマーケットチャンスがあるという見方もできるわけです。

 例えば「グラファー」※とか「xID」※みたいな、「GovTech」(ガブテック/行政×テクノロジー)領域のスタートアップが、もっと伸びていくといい。
※グラファー:行政手続き効率化のサービスを提供するスタートアップ
※xID:エストニア発のデジタル身分証サービス

 教育に関しても、日本の行政と家計を合わせた規模はGDPに対して3パーセントくらいしかなくて、先進国の中で最低レベルなんです。

 今年に入って「コードタクト」※がNTTコミュニケーションズのグループ企業になって、次のステージを狙ってますけれど、「EdTech」領域にもああいった新しいチャレンジャーがどんどん出てきてほしいですね。
※コードタクト:教育機関向けのオンライン授業支援システム「スクールタクト(schoolTakt)」の開発を行う

 スタートアップって、以前まではIPO(株式公開)ばかり志向していたのが、最近では大企業と良い距離感で連携する企業が出てきて、良い流れだと思っています。

藤井 各プレイヤーの得意分野を共有していくということですね。

 スタートアップは発想力と機動力があっても、なかなか人海戦術ができない。そこで大企業のマンパワーや資金力が必要になってくる。大企業とスタートアップが相互に補完しあうようなイメージですよね。

太田 そうです。その点で、都市計画から行政・教育・医療などの領域に、ベンチャー、大企業ともに大きなチャンスがあると思っています。

 これまで公共機関が溜め込んできた宿題を、スタートアップと大企業がうまく協働して処理していくという流れができていくといいですよね。「代わりに宿題やったんで、ノート見せてあげるよ」みたいな(笑)。

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