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【太田直樹✕藤井保文】謎ワード「スマートシティ」をリードするプレイヤーは誰か?
2021.04.22

IT&ビジネスコラム第3回

【太田直樹✕藤井保文】謎ワード「スマートシティ」をリードするプレイヤーは誰か?

著者 NewsPicks BrandDesign

※本記事は2020年9月10日にNewsPicksに掲載された記事です。

ローカルxテックで、セクターを越えた事業創造を企画・運営。15年1月から約3年間総務大臣補佐官として、地方創生とテクノロジーの政策立案に関わる。18年2月に起業。19年10月から総務省の政策アドバイザー。ボストンコンサルティングに18年在籍し、テレコム・メディア・テクノロジーのアジア地域のリーダーを務める。

東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 修士課程修了。ビービットのコンサルタントとして、2014年に台北支社、2017年から上海支社に勤務し、UX志向のデジタルトランスフォーメーションを支援する「エクスペリエンス・デザイン・コンサルティング」を行っている。2018年9月からはニューズピックスにおいて、中国ビジネスに関するプロピッカーを務める。2019年3月に『アフターデジタル』を上梓。また、政府の有識者会議参画、FIN/SUM、G1経営者会議などでのアドバイザリや講演活動も多数行っている。

 デジタル化に立ち遅れていた日本社会の脆さが、新型コロナ禍によってあぶり出されている。裏を返せば社会のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を押し進める好機となる現状を、日本はどのように立ち回れば良いのだろうか。

 そのヒントを探るべく、株式会社New Stories代表・元ボストンコンサルティンググループ・元総務大臣補佐官の太田直樹氏と、株式会社ビービット・東アジア責任者で、『アフターデジタル2』を上梓した藤井保文氏の対談をお届けする。

 官民の両サイドでDXの啓蒙を行ってきた二人の視点から、「スマートシティ」というビッグワードの実態と、その鍵となるプレイヤーを探る。

 インターネット、スマホ、SNS、Zoom、5G……テクノロジーの進化によって、社会はどんどん繋がっていきます。人と人、人と社会との距離を超えながら、いかによりよい未来を創っていけるのかを探る大型連載「Change Distance.」。

 コミュニケーションの変革をリードするNTTコミュニケーションズの提供でお届けします。

なぜ日本はDXが進まないのか

太田 藤井さんは、2017年頃から中国でお仕事されてるんですよね。

藤井 はい。2014年に台北、2017年から上海を拠点に仕事をしています。

太田 私はボストン・コンサルティング時代に、2013年からアジアのテクノロジーグループを統括していまして。中国はもちろん、オーストラリアからインドまで、多い時で年に44回、飛行機に乗っていました。

藤井 むちゃくちゃ乗ってますね(笑)。

太田 そのせいで腰がもう……(笑)。それで、その時の僕の同僚が「中国がヤバい」と話していたのが、ちょうど2017年夏のダボス会議の時だったんです。

 当時、特にアメリカでは、中国に対して「シリコンバレーの真似だろう」くらいに思っていた人も多かったんだけど、実際に行った人は結構圧倒されていて。「これから凄いことになる」と。

藤井 まさに2015年から2017年頃にかけて中国は激変していましたね。

(しばし雑談)

藤井 改めて、太田さんはグローバルビジネスの大先輩だということがよくわかりました。

太田 いえいえ(笑)。

──グローバルビジネスのトレンドを踏まえて、現在の新型コロナ禍以降の日本の変化については、どう思われていますか。

太田 そうですね。2点あります。

 1つは国家目線。僕は2015年から国の仕事もやっているのですが、特に携わっていたのが、行政、教育、医療です。

 結果から言えば、今回の新型コロナウィルスのパンデミックの中で世界と日本が比較されて、日本の脆さが全部出たなと思っています。いわば、15年ほど宿題を溜め込んだ状態だったのが、コロナがきて突然夏休みが終わった状態みたいな。

 行政は、定額給付金や持続化給付金の手続きで、IT化の遅れにより現場が混乱してしまった。教育についても、休校やキャンパスの閉鎖に伴うオンライン授業への移行がスムーズにはできませんでした。また、遠隔医療やIT化の普及の遅れが、医療体制逼迫の一因にもなりました。

 逆に言えば、後れを取った15年ほどの行政・教育・医療のDXを一気に進める好機が訪れていると言えるかなと。

──なるほど。

太田 もう1つは企業目線です。昨年「デジタル」や「Society5.0」※をテーマに話をしてほしいと、いくつかの経済団体から依頼されていました。
※Society5.0:内閣府が定義するオンラインとオフラインが融合した新たな社会像

 大企業から中小企業まで、計2000人くらいの経営者に講演を行いましたが、講演の後の交流会で、関心を持って質問をいただいたり、突っ込んだ議論をした経営者は両手で数えるほどしかいなかったんです。
──それは少ないですね。

太田 2011年に投資家のマーク・アンドリーセンが、ウォール・ストリート・ジャーナルに「ソフトウェアが世界を飲み込む理由(Why Software Is Eating The World)」という手記を寄稿しました。

 「いろいろな業界やサービスは、ソフトウェアによって大きく変わっていく」という話をしてみても、残念ながら、あまり響かなかったですね……。

 以前、小林喜光さん(=三菱ケミカルホールディングス会長・元経済同友会代表幹事)が、日本企業のデジタル化の課題を「経営者の心の岩盤」とおっしゃったことがあって、それを思い出しました。

 その頃に比べると、今はより多くの経営者がデジタルに関心を持つようになっただろうと期待していて、実際、それで講演の依頼もいただいたわけですが、岩盤は残されたままでしたね。

──藤井さんはいかがですか? 『アフターデジタル』刊行以降、日本をいかにDXするかについて話す機会が多いと思いますが。

藤井 そうですね。みなさんには、リアルがデジタルに置き換えられていくのではなく、デジタルがリアルを飲み込んだ状態であるというアフターデジタルの説明を、中国の具体例を出しながらしています。

 最近は、「DXの目的は新しいUX(ユーザーエクスペリエンス)の提供だ」と言い切っています。

 私の言葉では「すべてがオンライン化して行動データが膨大に出てくる時代においては、製品販売型から体験提供型に、ビジネスの競争優位性が移っていく」というふうにビジネス環境の変化を語ることが多い。

 それを踏まえると、さきほどの「すべてがソフトウェア化していく」というお話はやはり本質で、その結果現実のサービスや事業が再定義されていく。それにはまず、サービスと顧客との関係の変化から始めないといけない。

 簡単な社内制度だけ先にデジタル化するのではなく、顧客との関係性が変わって、ビジネスモデルが変わって、業務プロセスが変わって、その先に社内制度も変わっていくという順番が大事なんだと。コロナ禍を通じて、この話が簡単に通じるようになった印象は強く持っています。

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