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“センスのなさ”から始める「発注力」の重要性
2021.04.20

IT&ビジネスコラム第2回

“センスのなさ”から始める「発注力」の重要性

著者 NewsPicks BrandDesign

コミュニケーションの未来とは

──最後に、先々の展望のヒントを伺いたいと思います。「未来に希望も持てない、かといって危機感も持ちづらい」。そんな状況にいる中で、我々はこれから先、どのように物事を変革していけばよいのでしょうか。

平田 「ダイアログ(対話)」という概念が重要になっていくと思います。僕は『わかりあえないことから』という本で、対話の必要性を中核に据えました。違いを尊重しつつ共通点を探るという主旨で、カンバセーション(会話)とは違う概念です。

 教育の文脈では「シンパシーからエンパシーへ」とも言われます。前者は弱い者への同情、後者は異なる価値観や文化的背景を理解しようとする態度です。共感とも言えるでしょう。欧州ではエンパシーが教育の基幹になっていますが、逆に日本人は「対話」と「共感」は苦手と言えます。

「ダイアログ」や「エンパシー」は、企業経営や自治体経営においてもポイントになってくる考え方です。もちろん成功例から学ぶこともありますが、自治体だけで1,700もある中で、まったく同じ例などないのですから。

宇田川 つまり派手な成功例に惑わされず、「個別に見ていく」ということですよね。
組織論に当てはめると、新しい状況に右往左往せずに問題を見極めながら、自分たちが何者なのかという個別のナラティブ(物語/常識の枠組み)を見失わないようにする。

 最初の話に戻ると、本質は大して変化していない。

 どうしてもメガプラットフォーマーなどの派手な成功例をベンチマークにしたりしがちですが、まずは落ち着いて自分の疾患が急性なのか慢性なのか、そして「何に本当に困っているのか」を見定めるのが大事ではないか、と思います。

──それを踏まえて、ICTが不断に進化していく中で、社会におけるコミュニケーションはどう変わっていくべきなのでしょう。

宇田川 コミュニケーションの未来について言えば、「もはやツールだと感じさせないツール」が大事になってくると思います。もっと人間の感覚に沿って、それを拡張するような人間化されたツールというか。

「Zoom飲み」とかリモートワークもそうですが、コミュニケーションツールと言われているものは、ツールである以上目的を伴っているわけです。ただ、“目的のいらない手段”こそが今の時代には必要だと思うんですね。

 例えば、人と人がすれ違う時、“互いに関心がない”ことにも意味がある。「儀礼的無関心」と呼ばれるものです。コミュニケーションの幅は、想像以上に深くて広いんです。

 こういう状態を、コミュニケーションツールと言われているものはまだ達成していないと思うので、チャレンジのしがいがあると思います。

平田 おっしゃるとおりです。

 例えば、今回の新型コロナ禍で起こったのは「孤立の加速」だと思っています。「対話」と「共感」が苦手な日本社会の弱さを突かれて、ストレスフルな社会に拍車がかかっています。

 企業や地縁血縁以外の、出入り自由なゆるい集団が、今後オンライン化が進めば進むほど重要になっていくはずです。僕はそれを「関心共同体」と呼んでいます。

 制度を設計する立場の人々は、その点を意識することが大事になってくるでしょう。

宇田川 世の中は大きく移り変わっていくように見えます。個別の事象には適切に対処していくことが必要でしょう。

 しかし、私たちにとって大切なもの、私たちがなすべきことは、実際のところそんなに変わっていないと思うのです。

必要以上に惑わされることなく、着実な変革の道を歩む。そのために、いかに「自分たちに必要なこと」を発見し、それを形にしていくことができるか。今は、そういうことに取り組む良い機会なのではないかと思います。

(編集:中島洋一 構成:吉田直人 写真提供:小林由喜伸 デザイン:岩城ユリエ)

※本記事はNewsPicksに掲載された記事です。

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