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“センスのなさ”から始める「発注力」の重要性
2021.04.20

IT&ビジネスコラム第2回

“センスのなさ”から始める「発注力」の重要性

著者 NewsPicks BrandDesign

危機を身体で把握する

──コロナ禍を契機にDXを推し進めようという風潮があると思いますが、アリバイ的な変革にならないためには何が大事になってくると思われますか。

平田 「3〜5年は維持できても、10年はもたない」と身体感覚でわかる人が組織内にいるかどうかは、今後ポイントになってくると思います。

──「身体感覚でわかる」というのは、もう少し具体的に言うとどういう意味でしょうか。

平田 この文脈に沿って言うと「危機の感じ方」は、言葉を換えれば「リアリティ」の捉え方とも言えるかもしれない。

 頭で「10年先はやばいのでは」と思うことはできても、「なんとかしないと大変だ!」「じゃあどうすればいいのか」とまでは切迫感を持って考えられない。

 身体感覚ではわかりづらいような長いスパンで進行する危機にこそ、構造的な改革が必要です。

宇田川 なるほど。「急性疾患」と「慢性疾患」にたとえるとわかりやすいかもしれません。

 急性疾患の治療は、短期的に起こる症状で原因が明確なので、抗生剤を飲むとか、外科手術をするといったように、医療従事者、つまり外部のプロが主役です。

 一方、慢性疾患の治療はそうはいかない。基本的に完治せず、長い付き合いになる。なので、患者がセルフケアをし続けることが主軸になります。この時、主役はプロの医療従事者というより、患者さんとその家族です。

 オリザさんが指摘しているのは、今の日本の組織における慢性疾患への対処ですよね。

平田 例えばわかりやすい成功事例として、青森県の八戸市があります。自治体の政策は多くが失敗していますが、危機意識を自治体全体で共有することで、うまくいった事例です。

──なぜ危機意識を共有できたのでしょうか。

平田 まあ単純な話なのですが、八戸市は2002年に開業した東北新幹線の終着駅だったので、経済的にたいへん盛り上がりました。ただ、2010年末に新青森駅への延伸が決まっていたので、好況は約10年の期間限定だと明確にわかっていたんです。

宇田川 なるほど。

平田 ここで市長以下が賢明だったのは、「この10年をバブルで終わらせまい」と持続可能なまちづくりを構想した点にある。文化事業などに注力して街を変えていったんですね。

 これはわかりやすいタイムリミットがあったという単純な例ですが、見えづらい危機を慢性疾患であると峻別し、対峙するのは簡単なことではありません。だからこそ首長のリーダーシップが必要になってくる。

 特にこれからのリーダーシップは、人々を牽引していくタイプよりも、被害を最小限にとどめながら、周囲と協働して持続可能性を模索していくタイプが求められると思います。哲学者の鷲田清一さんは、これを「しんがりのリーダーシップ」と呼びました。「しんがり」とは撤退戦の際、全軍を逃がすために追っ手を食い止める役割のことです。

 つまり、中長期的な危機の本質をしっかり言語化して優先順位をつけ、仲間に共有したり、説得したりできるリーダー像です。声高に引っ張っていくのではなく、時には退却も厭わない。

 本質を見誤ってただ危機を煽るだけのリーダーだと、集団全体が冷静さを失ってしまうということになりかねません。

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