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“センスのなさ”から始める「発注力」の重要性
2021.04.20

IT&ビジネスコラム第2回

“センスのなさ”から始める「発注力」の重要性

著者 NewsPicks BrandDesign

※本記事は2020年9月7日にNewsPicksに掲載された記事です。

1962年、東京都生まれ。国際基督教大学在学中に劇団「青年団」結成。戯曲と演出を担当。現在、東京藝術大学COI研究推進機構特任教授、大阪大学COデザインセンター特任教授。2002年度から採用された国語教科書に掲載されている平田のワークショップ方法論により、多くの子どもたちが、教室で演劇を創る体験をしている。戯曲の代表作に『東京ノート』(岸田國士戯曲賞受賞)、著書に『演劇入門』『演技と演出』『わかりあえないことから―コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代新書)など多数。

埼玉大学経済経営系大学院 准教授。早稲田大学助手、長崎大学経済学部講師・准教授、西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より現職。 専門は組織論、経営戦略論。 イノベーティブな組織をいかに創り実践するかについて、社会構成主義に基づくナラティブ・アプローチの観点から研究を行っている。著書に、『他者と働く—「わかりあえなさ」から始める組織論』がある。

 新型コロナウイルスのパンデミックは、社会のデジタルシフトをより押し進めたかのように見える。

 すこし先の未来を見据えた時、DX、アフターデジタル、withコロナといった社会変化は、私たちにどのような影響を及ぼすだろうか。人と人、人と社会のつながりをどう捉え直していくべきなのだろうか。

 そのヒントを探るべく、教育や言語コミュニケーションの専門家である劇作家の平田オリザ氏と、経営学者でありながら人文知にも造詣が深い宇田川元一氏との対談をお届けする。

 インターネット、スマホ、SNS、Zoom、5G……テクノロジーの進化によって、社会はどんどん繋がっていきます。人と人、人と社会との距離を超えながら、いかによりよい未来を創っていけるのかを探る大型連載「Change Distance.」。

 コミュニケーションの変革をリードするNTTコミュニケーションズの提供でお届けします。

本当に「変化が激しい時代」なのか

──コロナ禍の影響で、社会が大きな変化に見舞われています。「Zoom」の活用が一般化したり、リモートワークの全社適用を決めた企業が増えたりと、デジタル化が一気に進行したように見えますが、お二人はこの先が見えづらい現況をどう捉えていますか?

平田オリザ(以下:平田) 先が見えないのは確かにそうですよね。ただ、いきなり話の腰を折るようで申し訳ないのですが、本質的にはあまり変わっていないように思えます。

 例えば平成の30年がちょうど終わりましたが、おそらく中国にとってこの30年はものすごい大きな変化だったと思うんです。それに比べると日本って大して変化していないだろうという、停滞しているだけで。政治的に見ても経済的に見ても。

 確かにデジタル化は急速に進みましたよね。新しいツールやメディアが登場すると、人間の体は一瞬追いつかなくなる。だから表面上は変化が激しいように感じるけれども、冷静に見ればそこまで変化はしていないのではないでしょうか。

宇田川 おっしゃるとおりだと思います。現代のビジネス環境を表現する「VUCA ※ 」という言葉がありますよね。私はあの言葉は絶対に使いません。

※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)

 理由は二つあります。一つは、ミクロで見れば技術革新などはあると思いますが、そもそも経営学説の中では、だいたい1940年代頃から「変化が激しい」と言われているんです。おそらく、さらにたどればもっと以前からあると思います。

平田 なるほど(笑)。

宇田川 もう一つは、注意深く見れば、「VUCA」という言葉が使われているのは、結局コンサルタントやメディアのポジショントークに過ぎないからです。

 言ってしまえば不安を煽って稼ぐビジネスに似ている。だから落ち着いて本質を見極めようというオリザさんの意見には同感です。

平田 そうですね。教育現場でも「地道な改革が必要」と主張するまっとうな本よりも、危機感を煽るような本が売れます。だから危機を捏造しますよね(笑)。

──耳が痛いお話です……。

平田 あまり世代論に言及したくはないのですが、加えて言えば、僕たちの世代くらい(1962年生まれ)までは「現状は不満でも、未来には希望があった」。ただ、今の若者たちは、ざっくり言うと「現状に不満はなくても、未来に不安がある」という状態です。

 つまり「先が読めない」ことよりも「希望が持てない」という不安が大きい。この構造が、今の日本の政治経済のダイナミズムのなさにも影響を及ぼしているように思います。

宇田川 確かにそうかもしれませんね。「現状に不満はない」というのは、さまざまな日本企業で起きている、おかしな「イノベーション推進」の状況を表しているとも感じました。

──おかしな「イノベーション推進」ですか。

宇田川 要するに「どんな必然性をもって企業変革をしたいと思っているのか」ということです。現状に実は不満がない。つまり大半の企業は、過去のビジネスモデルで今は食えてしまっている。

 だから「経済的に下り坂だ」ということが何となくわかっていても、実は変革に必然性を感じていなくて、取り組むことが世間的に正しそうだから、やってみている。そういったアリバイ的な「イノベーション推進」や「変革」がよく見受けられます。

 こんな話をすると、企業変革の議論では往々にして「危機感を持つことが大事だ」という意見が飛び出すわけですが、それは短期での変革の話です。長いスパンの変化に対して、時間をかけて変えていこうという時に、危機感を持てる持てないは有効でない議論です。

平田 「危機感を持て」と言われても、人間は30年とか50年先のことに対して身体性をもって考えることはできませんからね。

 人口減少が進みつつあるとはいっても、1億2000万人の豊かな市場があって、明日どうにかなる、という状態でもない。目に見える危機がないので、余計に危機感を持ちづらいと思います。

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