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「モバイルPASMO」の実現までに13年もの歳月がかかった裏事情
2020.10.27

IT&ビジネス最新ニュース第71回

「モバイルPASMO」の実現までに13年もの歳月がかかった裏事情

利便性重視のために協議会の1社が動く

 ところが2020年1月、PASMO協議会は突然モバイルPASMOの春以降の提供を発表する。まず3月にAndroid版の提供を開始することが発表されたが、触れられていなかったiPhone版(Apple Pay)についても仕組み上の差異はないため、Android版からそれほど時間をおかずして提供が開始されることは明らかだった。

 後日談だが、Apple Pay向けのPASMOがスタートした10月6日の発表会において、複数のAppleジャパン関係者が会場で待機していたほか、普段Apple関係の取材と記事執筆のために米国へ招待されているメディアやジャーナリスト各氏がPASMO発表会場に多数呼ばれていたのを目撃している。

 同じApple Pay向けの電子マネーサービスで、Mizuho Suicaや楽天Suicaの発表会場ではApple関係者を1名見かけた程度だったことを考えれば、AppleとしてPASMOサービスのApple Payへの提供は非常に期待を寄せていることの裏返しなのではないかと思う(このあたりは詳しく後述する)。

 このように、スマートフォンのプラットフォーマーのお墨付きで提供が開始されたモバイルPASMOのサービスだが、その背景には協議会に参加する1社の奮闘があったと聞いている。前述の通り、本来はモバイルPASMO導入でJR東日本に支払う費用が協議会参加各社の頭数でカウントされていたものを、南東京エリアを中心に地盤を持つ大手鉄道会社が肩代わりしたと、筆者の複数の情報源が証言している。

 交通系ICカードのモバイル対応は、オンラインチャージや端末上での定期券購入といったメリットがあるが、対応しているのがモバイルSuicaしかなかったために、主に私鉄沿線在住者のようにPASMOで定期券を発行する必要があったユーザーは、オートチャージ機能を設定したPASMOカードを持つか、あるいはPASMOカードとモバイルSuicaを両方持って適時使い分ける必要があったりと、不便を強いられていたからだ。

 結果として、参加1社の決断によってPASMO経済圏のユーザーはモバイルのメリットを享受できるようになるわけで、定期購入のためだけに窓口や自販機に並んだり、モバイルSuicaとの両方持ちをせずともよくなった。

 もう1つ、モバイルPASMOの実現にあたって難しいとされていた問題として、Androidのおサイフケータイにおける交通系ICの処理番号が、SuicaとPASMOでバッティングするため共存が難しいことが知られていた。iPhone 8以降であればWallet内に最大12枚ICカードを登録し、さらにSuica複数枚の共存も可能なApple Payでは特に問題ないと考えられていたが、Androidに関してはおサイフケータイの仕様の問題でどうしてもSuicaとPASMOがバッティングしてしまう。

 そのため、PASMO for Androidについては「インストールできる機種が限定されている」。さらにSuicaとPASMOの両方をインストールして適時切り替えられる機構を持つのは「最新機種のごく限られた範囲」と非常に限定的なサポート対応になっている。一説によれば、内蔵するFeliCaチップのリビジョンに依存するもので、2つの交通系ICカードサービスが共存できる機種はこのリビジョンが最新のもの限定される(おおよそ2019年春以降にリリースされた機種)。

※この記事はCNET Japanから配信されています。

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