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DXの潮流、CDOの挑戦
2021.07.06

オリックス生命保険

「想いを、心に響くカタチに」する、お客さま本位のDXとは

オリックス生命保険株式会社 執行役員 IT本部管掌 児玉 英一郎 氏

CXと同時にEXも向上させなければ、エンゲージメントを革新できない

 CX向上におけるもうひとつの重要テーマが、複数のチャネルにおける統一されたCXの実現だ。特に保険業界は直販、代理店、非対面のネット販売と、チャネルごとに個別システムがあるため、システムの統合が大きな課題となっている。

 「弊社は保険代理店、金融機関、直販、通信販売という4つのチャネルが相互に補完し合うオムニチャネル化を進めてきました。そのバックヤードを支えるIT本部では、チャネル横断でお客さまと代理店のエンゲージメントを革新するべくシステムの統合に取り組んできました。しかし、まだ社内システムが完全に統合されたとはいえません。その課題解決はIT本部の重要なミッションのひとつだと認識しています」

 オリックス生命保険のIT本部では、IT組織がどのように価値を創出し、リソースを活用して機能を提供するかを図示したものを『オペレーティングモデル』と名付けている。そのオペレーティングモデルには、「お客さま」「代理店・ビジネスパートナー」「社員」から構成されるステークホルダーが真ん中に記載され、「チャネル横断のお客さま・代理店エンゲージメントの革新」との施策が明記されている。特筆すべきは、ステークホルダーの中に社員が含まれていることだ。その狙いについて児玉氏は、以下のように説明する。

 「弊社のステークホルダーは、470万のご契約者さまだけではなく、販売チャネルに所属される募集人の皆さま、そして事務部門・営業部門・コールセンターを含めた全社員を含みます。すべてのステークホルダーの体験価値を高めなければ、良いサービスは提供できません。ですから、弊社はCXだけではなく、EX(エンプロイー・エクスペリエンス)も重視しており、今後さらなる強化に取り組む予定です」

社内都合によるシステム強化ではなく、“お客さま本位”で社内DXを推進する

 DXで新たな価値を創出するには、社内視点でのシステム強化ではなく、その結果、顧客にどのような価値を提供するのかという視点で設計する必要がある。なぜなら、児玉氏が指摘したように、DX時代のシステムはエンドツーエンドで社内と顧客をつなぐ基盤になるからである。しかし、児玉氏は、これまでの伝統的な金融機関のシステム化は、お客さま本位ではなかったと指摘する。

 「生命保険会社に限らず事業会社におけるシステム投資や自動化は、ともすれば自分たちの業務を楽にする目的が先行し、結果としてその負担をお客さまに転嫁することとなりかねません。本来、生命保険会社の本分はフィデューシャリー・デューティーの実現ですから、その手段であるシステム化や自動化もお客さま本位でなければ、いずれお客さまから見放されてしまうと、私は危機感を持っています。例えば、単純なITコスト削減ありきではなく、お客さま満足を追求した結果としてコストが下がる、そういう形を目指しています」

 顧客本位のシステムは、ミッションとテクノロジーを俯瞰できるDX推進の視点が必要なため、情報システム部だけで要件定義することは難しい。多くの企業がDX推進部やチーフ・デジタル・オフィサーを設置する目的のひとつは、そこにある。しかし、オリックス生命保険は、要件定義はビジネス部門と協働して実施しており、DX推進部やチーフ・デジタル・オフィサーを設置していない。

 「各部門はそれぞれのミッション実現に全力を尽くすので、ともすれば視野が狭くなりお客さま本位の視点が揺らいでしまうことがあります。ですから、お客さま本位の改革は、部門の利害から独立した組織が推進することが理想です。多くの企業は、中央にDX推進のタワーを立てて改革を進めますが、弊社では関係部門を横串で捉え、BA(ビジネスアナリスト)部門と協働しながらプロジェクトを推進しています。また、全社レベルでの事業改革に向けた意識改革、組織改革をリードする機能として全社横断BPR推進担当をコーポレート部門下に設置しています。

 全社横断BPR推進担当がリードした社内変革の一例として、脱ハンコの取り組みを紹介します。当社においても新型コロナウイルス感染拡大にともない、在宅勤務が導入されたことを契機に、総務部門、IT部門との協働により短期間でのリリースを実現しましたが、社内決裁をワークフローシステム化した、という事実だけではどうしても変革のドライバーが弱くなりがちです。そこで、全社横断BPR推進担当が『10月某日は、我が社からハンコが消える日』というキャンペーンを打ち出し、一気にペーパーレス化によるムダ削減を浸透させました。従前より「ムダ!ロス!発掘」と銘打ち、全社レベルで業務の断捨離を進めていますが、そのほとんどがデジタルに立脚した施策となっており、社内DXの推進につながると期待しています」と、児玉氏は説明する。

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