これらの取り組みから考えた時、ユニクロは新店舗において、リアル、ヴァーチャル、デザイン、デジタルを駆使して、店舗の役割について10個にも及ぶアップデートをしたと言えます。それは、(1)「グローバル旗艦店」、(2)「Life Wear」の拠点、(3)「OMO」の場、(4)「顧客体験」の場、(5)「ショールーム」、(6)「UT」の拠点、(7)「サスティナビリティ」、(8)「ブランディング」、(9)「地域密着」のシンボル、(10)「ライフスタイル」提案の場です。
特に地域密着は非常に意識されていることが見て取れます。地域コミュニティーとしての銀座との関りをテーマのひとつとし、店舗展開や情報発信をすることで、同店を地域密着のシンボルにしようとしていると分析されます。
総じて見ると、ユニクロの新店舗でのDXのポイントは、ユニクロは「Amazonになろうと思っていない」、つまりは、ユニクロらしさに留意しながらデジタル化を進めているということです。
すべての商品を独自規格のICタグで一元管理するなど、国内小売企業で最もデジタル化が進んでいるのがユニクロですが、Amazonなど海外のデジタルネイティブ企業と比べると、まだまだ差があります。しかし、無暗にデジタル化するのではなく、ユニクロらしさは何かということを考えながら、顧客がユニクロに求めているものを、店舗、商品、ビジネス戦略においてアップデートしようとしています。そういった中での1つの答えが今回のグローバル旗艦店ではないかと思います。
コロナ禍でのニューノーマル、ECでショッピングが完結する流れが加速する中で、店舗を拡大していく戦略の有効性は低くなっていくでしょう。しかし、「地域のシンボル」であり、「顧客体験」と「ショールーム」を兼ねる旗艦店がいくつかあることで、顧客はたまに旗艦店に行って、自分の欲しいものやサイズがわかれば、あとはECで都合の良い時に購入するといったショッピングスタイルが当たり前になっていくでしょう。駅中などにユニクロの自動販売機が次々と設置されるかもしれません。そうするとビジネス展開として店舗を多く抱える必要はなくなります。
この動きは、新型コロナウイルス対策として非接触ビジネスを模索する小売業において、リアル店舗のひとつのあり方を示しています。
これまではプロダクトセントリック、つまりは商品中心主義であったものを、デジタルテクノロジーを活かしていくことにより、カスタマーセントリック、つまりは顧客中心主義に転換させていく。これこそが、デジタルシフトの真の意義です。何のために、誰のために、どのようなミッションのためにデジタル化を推進していくのか。その目的が問われているのです。