企業変革の方向性の2つ目は、「オンライン・ファーストな企業をめざす」ということです。
私は先日、コロナ禍に立ち向かうための社会提言を公開しました(提言「オンライン・ファースト社会」という新しい日常 ~ オンラインとリアルが融合する社会へ ~ 株式会社NTTデータ経営研究所)。この提言で提示した「オンライン・ファースト社会」とは、人間のあらゆる社会的活動において、オンラインがあたりまえの存在として溶け込んでいる社会のことをいいます。
オンラインサービスは、どうしてもリアルの代替でしかなく、あくまでも緊急時のバックアップ的なものだという認識がこの社会にはあります。医療でも教育でも行政手続きでも、リアルでの対面・接触が重要であり、オンラインを用いただけでは、法制度的にも、社会慣習的にも不十分だとみなされることが多いようです。
この考え方を抜本的に払拭し、オンラインとリアルが「同等の価値を持つもの」と認める社会にすることが、この提言のメッセージです。
オンラインミーティングが多用されている今でさえも、「大事な偉い方とのミーティングなのでリアル対面でお願いしたい」とか、「顧客クレームへの謝罪だからさすがにオンラインではまずいだろう」とかいう声は少なくありません。このあたりの認識が社会全体として変わるだけで、かなり柔軟で効率的な世の中になると考えます。
さらに、「オンライン・ファースト」という言葉には、単純にリアルよりも先にオンラインを選択するということだけでなく、企業のビジネスを、「オンライン・ネイティブ」としてゼロからつくりあげようという考え方が含まれています。オンライン・ネイティブとは、「インターネットがあらゆるところに張り巡らされ、多くの方々がスマートフォンを持ち、デジタル技術が誰にでも容易に使えるようになっている今の世界を前提として考える」ということです。
あなたの所属する会社が、もし今日創業するなら、どのようなサービスをどのようなプロセスで行うでしょうか。あらゆる制約をなくした上で、現存するデジタル環境の活用を前提として考えれば、その答えは今とは全く違うものになることでしょう。