2020.08.28
ニューノーマル時代にビジネスはどう変わるのか第7回
製造業の現場は、オンラインのみで成り立つのか?
著者 輿水 大和
オンラインで「良くなったこと」もある
もちろん、オンライン化が進んだことで「良くなったこと」もあります。例えば、製造のプロセスにおいては、最初にクライアントと製造計画をデザインする段階と、それをモジュールに分けて開発計画を作る段階に分けることができます。そういった中でエンジニアたちは、すでにプランやスケジューリングができてタスクが明確となったプロジェクトにおいては、現場に集まるよりも、自分のペースで集中して作業ができるオンラインの方が圧倒的に効率的だと気づき始めています。これまで「当たり前」だと考えていたことが実はそうではなかった、まるでパンドラの箱を開けて覗いてしまった、そんな状況ともいえます。
企業現場でのDX検討についても、私の周りでは良い影響も出始めています。例えば、名古屋の電子機器製造企業の子会社であるIT系企業では、16名のIT技術者たちとAIの深層学習の勉強会を実施し、将来的には実用化を念頭に置いて「部品アッセンブリの画像検索」「AIを活用したFAQマネジメント」といった複数の案件について検証をしています。
このようなDXにおける検証プロジェクトは若手人材が中心となるため、管理職が関わりにくいケースがあります。ところが、コロナ禍による会議や報告会のオンライン化によって、決裁者への出席の調整をしやすくなりました。前述のIT系企業では6月にオンライン報告会を開催しましたが、そこには会長、社長をはじめ執行役員全員が出席しました。こういった場に参加することで、深層学習技術のディテールはともかく、どこが問題でどこを突破すれば解決できるかという塩梅について、理解いただける機会になったのではと思っています。
DXは、経営層の理解とコミットがなければ進展しないものです。ともすれば管理職が蚊帳の外という状況に置かれやすいジャンルですが、オンライン化によってそれを解消できる方法論の兆しが見えつつあるのではないでしょうか。
次回は、製造企業がDXによる技術開発において、どのような点から検討していけばよいかのポイントを解説していきます。