2020.08.28
ニューノーマル時代にビジネスはどう変わるのか第7回
製造業の現場は、オンラインのみで成り立つのか?
著者 輿水 大和
3密を避けるため、製造現場ではどんなデジタル技術が必要か?
現在の状況を、私はコロナの時代の変容ということで、デジタルトランスフォーメーション(DX)になぞらえたコロナトランスフォーメーション(CX)と呼んでいます。これから「3密への自粛」が日常となる社会において製造現場を回していくためには、 CXという制約の中で、デジタル技術をどう活用するかがカギとなります。
そのため2月頃に「アフターコロナIAIP(精密工学会 画像応用技術専門委員会)展望」という画像AI系の学会にタスクフォースをスタートさせました。当初、隔月で50、60人での開催を予定していましたが、5月の研究会ではオンラインで講演や研究発表などを行ったところ一気に153人まで参加者が増えました。
学会では膨大な実験結果のエッセンスを持ち寄って議論しています。例えば、「製品検査のやり方」についてです。ものづくりの現場では、訓練を受けた技術者が製品の小さな傷、形状異常やシミ、汚れなどの欠陥を検証しています。現場なら関係者が一同に会してそれを観察し、気になる部分があれば指で差せばすぐに説明ができます。しかし、現在のオンライン会議の画像品質では、どの部分を指してしているかを第三者が画面上で正確に把握するのは難しい。
そういった課題に対して、「指が画面上で製品のどこを指しているのか、指差しを補助する技術」「アイコンタクトカメラでオンライン会議での視線ズレを解消する」といったオンラインならではの新たな取り組み(CXを克服できるDX技術のあり方)について議論をしています。
これらの議論は、医療分野でAR、VRを使って遠隔手術をするといった話と発想としては似ています。コロナ禍において様々な業界で、5GやIoTといったデジタル技術の活用が模索されていますが、業界ごとでパラレルに散在している技術を、製造現場においてどう組み合わせ、有効なものにしていくかについて、文字通りリアルに走りながら考えている状況です。
ただ現状では、人が集まれない緊急事態を回避するために、まず必要な技術について手探りをしている状態にあります。製造業におけるフィジカルな工程すべてがオンラインのみで成り立つはずがありません。ゆくゆく必要になるのは、例えば工場内の空調の自動化など、デジタルの活用によって「3密であってもリスクを排除できる」ということを実現するのが製造業におけるDXの使命だと思っています。