コロナ禍において、製造業の現場でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められています。
トヨタ自動車や愛知製鋼など多くの製造業との共同研究に携わってきた、中京大学・輿水大和名誉教授は「3密への自粛が日常となる社会において、製造現場もオンラインを前提としたビジネスのトランスフォーメーションが不可欠になる」と指摘します。ニューノーマル時代に製造業はどうあるべきか?現場の“リアル”とともに輿水名誉教授が語ります。
コロナによって、製造現場では何が起きているのか?
私は愛知県を中心に、毎年10社ほどの企業とAIやIoTなどデジタル技術の共同研究に携わっていますが、共同研究は2月以降すべて、Zoomなどのオンラインで行われています。しかし、自動車の関連企業の鍛造部や鋳造部などの現場では、現在も人が集まって作業をしています。
例えば、旋盤やボール盤などで、鉄を削ったり磨いたりするリアルな作業があります。こういった現場作業での課題は、関係者が「同じ場所で同じものを見る」必要があることです。試作したエンジンブロックなどは1つしかありません。それを共有するには、現状では現場に集まるしかない。密にならないよう試作品づくりを自宅で行うとしたら、試作品のパーツ類を全部自宅に持っていくことになりますが、情報管理や設備投資の観点から現実的ではありません。