とはいっても、新型コロナウイルス感染者が増加している今、コロナ前のように、多くの従業員が集まるオフィスに戻すことは難しい状況です。もしこの状態でオフィス勤務を本格的に再開するのであれば、どのような対策が必要になるのでしょうか。
まずは、「3密を避けられるレイアウト」です。厚生労働省が新型コロナウイルスの感染防止策として打ち出している3密(密閉・密集・密接)の状態を避けるためにも、オフィス内の物理的な環境整備は不可欠です。
2020年5月には、経団連が「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を発表しています。このガイドラインによれば、社員同士が一定の距離を保ち、対面せずに業務ができるようなデスクレイアウトに変更する、来客と接する機会が多い受付やミーティングルームにはアクリル板を設置することなどが挙げられています。社員が安心して働けるオフィス環境に変えていく必要があります。
2つ目が「動線計画の見直し」です。新型コロナウイルスの感染防止として必要なのは、デスクのレイアウトだけではありません。社員のオフィス内での動き方も見直すことが重要です。特に社内の通路は、社員同士や、社員と来客が近い距離ですれ違うため、接触しやすい条件が揃います。
床面積に余裕があれば、通路の幅を広げて距離を開け、通路幅が狭いのであれば通路を一方通行にしてすれ違う機会を減らすといった工夫が有効でしょう。
3つ目が、「リラックスできる雰囲気」です。コロナウイルスと直接関係ありませんが、重要な要素となります。
感染防止のためにオフィスに出勤する社員の数を抑えると、社員全員が出勤していた時とは業務の進捗状況が変わります。出社していないメンバーと直接打ち合わせができないことで、連絡や確認の手間がかかり、業務完了までの作業時間も長くなります。出勤していないメンバーよりも、出勤している社員の負担は自然と大きくなるものです。
たとえば、小さくてもゆっくり過ごせる休憩スペースの確保や、いかにもオフィスといった堅苦しさを感じさせない内装への変更、見るだけで癒される観葉植物の配置など、リラックスできる雰囲気づくりが大切です。社員のモチベーションが下がりにくくなって、業務へのストレスが減るでしょう。
働こうと思えば、自宅でも働ける時代になった今、単なる“働く場所”としてのオフィスの存在価値は、コロナ前よりもきっと落ちていることでしょう。今、オフィスに求められているのは「自宅で働く以上に価値を生み出す場所」です。
在宅勤務が当たり前になればなるほど、 在宅勤務にはない価値を生み出すオフィスの存在意義は、むしろ高まっていくことになるはずです。