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デザイン思考は、イノベーションを生みだす魔法の杖ではない
2021.07.21

ニューノーマル時代にビジネスはどう変わるのか第31回

デザイン思考は、イノベーションを生みだす魔法の杖ではない

著者 斎藤昌義

 「デザイン思考」という言葉をご存知でしょうか。デザイン思考とは、サービスやプロダクトを利用するユーザーの“あるがまま”を先入観にとらわれず観察、理解し、ユーザー自身も気づかない本質的な課題を見つけ、最善の解決策を見つけ出そうとする思考方法です。ただ思考するだけではなく、解決策を実際に試し、そのフィードバックを得て、より良い結果を追求する取り組みでもあります。

 このデザイン思考に、ビジネスシーンで実際に取り組んでいる人も多いかもしれません。日本では、2018年に経済産業省と特許庁が「『デザイン経営』宣言」という資料を発表しており、企業に対し積極的にデザイン思考に取り組むことが推奨されています。

 しかし、デザイン思考は“魔法の杖”ではありません。デザイン思考を導入したからといって、自社の新ビジネスが成功するというわけではありませんし、イノベーションがすぐに起こせるわけでもありません。むしろ、デザイン思考を間違って理解してしまうことで、失敗してしまうことの方が多いでしょう。

 デザイン思考は、本来はどのように導入するのが正解なのかを考えてみます。

ITでビジネスの変革を成功させた2つの企業、その要因とは

 デザイン思考の話をする前に、ITで自社のビジネスを変革した、2社の例を紹介します。少し長くなりますが、この2社の取り組みは、デザイン思考を取り入れるうえで大変参考になります。

 まずは、建設機械メーカーのコマツ(株式会社 小松製作所)が展開している、「スマートコンストラクション」というサービスの話です。このサービスは、建設機械に組み込んだセンサーやドローンを駆使して、建設現場をデータで「見える化」し、建設作業の効率化や安全の確保、さらには土木工事の自動化を見据えたものです。IoTの先駆的事例として業界で注目され、2020年のDXグランプリ(※)にも輝きました。
※DXグランプリ…経済産業省と東京証券取引所が、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」企業の中から、“​デジタル時代を先導する企業”を共同で選出する取り組みのこと。

 筆者はこのプロジェクトの当事者にスマートコンストラクションをスタートした動機について尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。

 「土木工事の現場の人手不足は、深刻です。いっそうの少子高齢化が進む状況にあって、いままでのやり方では、増え続ける工事の需要に対応できなくなります。この問題に対処するには、他に選択肢はありませんでした」

 同社は、IoTの事例を創りたかったわけでもなければ、DXグランプリを受賞したかったわけではありません。向きあうべき課題があり、それを克服するための戦略を描き、スマートコンストラクションというサービスを実現しました。それを、世間が評価しただけのことです。

 もう1つ、トラスコ中山という、建設現場や工場に必要な工具などのプロツールを専門に扱う商社の例を見てみましょう。こちらは、デザイン思考の成功事例として語られることもあります。

 同社は現場からの注文が入った後、商品を顧客にすぐに届けるため、物流のスピードアップを図ってきました。しかし、天候の急変や想定外の計画変更が日常茶飯事の現場では、これまでのやり方のままでは、顧客の期待に応えられないことに気がつきました。

 そこで同社は、現場で使用する可能性が高いプロツールをあらかじめ現場に揃えて置いておく「MROストッカー」というサービスを始めました。使った分だけ後で請求するという“富山の薬売り”のような仕組みを、プロツールに適用したのです。

 同社はこのMROストッカーをスタートするために、基幹業務システムを刷新。さらにIoTやスマートフォンを駆使して現場のデータを捉え、AIで的確に需要予測を行い、発注を自動化するなど、最新のテクノロジーを動員しました。この仕組みは、顧客から高く評価され、業績も向上。コマツ同様、2020年のDXグランプリを受賞しています。

 さらに、「DX のあるべき姿を示したことが評価につながる」として、公益社団法人 企業情報化協会による2020 年度IT賞 「IT 最優秀賞」も受賞しています。

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