NTTコミュニケーションズ

Bizコンパス

デザイン思考は、イノベーションを生みだす魔法の杖ではない
2021.07.21

ニューノーマル時代にビジネスはどう変わるのか第31回

デザイン思考は、イノベーションを生みだす魔法の杖ではない

著者 斎藤昌義

「デジタルで新規事業を立ち上げる」という会社は、その時点で失敗している!?

 コマツとトラスコ中山に共通するのは、まずは「課題」を明確に定め、その課題を解決するための戦略を立てて、それを実践したことです。

 そして何よりも、これら取り組みを成功に導いたのは、自分たちの描く理想の“あるべき姿”を何としても実現したいという熱い想いがあったからです。

 テクノロジーは、あくまでも戦略を実践するための手段でしかありません。しかし、ビジネスシーンではとかく「手段の目的化」が起きてしまいがちです。問題を解決するための手段でしかない「デジタル技術やデータの活用」を、無理やり主目的にしてしまっているケースも見られます。

 こうした企業の担当者は、言葉では「事業課題の解決」を目的にしていると言うものの、結果的にはデジタルありきでの取り組みになってしまっています。特に、“デジタルで何とかなりそうなもの”を課題として選んでいるようにも見えます。経営や事業にとって、その課題がどれほど重要であるかは、あまり考慮されていません。言葉は悪いのですが、カタチを社内外に見せるためだけに、デジタルがうまくはまりそうな課題を選び、取り組もうとしているわけです。

 「デジタルで新規事業を立ち上げる」というスローガンを掲げている企業もあるかもしれませんが、これも“手段の目的化”に類する発想でしょう。つまり、課題を解決するための新規事業ではなく、「デジタルを使うための新規事業」なのです。これを「デジタル戦略」や「DX」と称している企業もあります。残念ですが、こうして生まれた新規事業は、成功する確率よりも失敗する確率の方が高いでしょう。

 本来、新規事業は目的ではなく、課題を解決するための手段に過ぎません。しかし、「新事業開発室」や「新規事業開発プロジェクト」と称して新規事業を作ることを目的にしている組織の中には、課題が何か、あるいは、いかなる課題を解決すれば業績にどれだけ貢献できるかを明確にすることなく、「目新しいビジネスを実現すること」が目的となってしまっているところもあるようです。

 「目新しい」にケチを付けるつもりはありません。しかし、他にもやりようがあるのに、「新しい」を目的にしているとすれば、本末転倒です。たとえ、その新しいカタチは作れても、それが成果につながることはありません。

 つまり、「課題」を明確に定義しないままに、企業がいくらデジタルで新たな取り組みをスタートとしたとしても、決して成果にはつながらないのです。

 ということで、企業がまず考えるべきは「課題」ということになるのですが、そもそも「課題」とは、どういうことを指すのでしょうか? シンプルに定義すれば、理想として目指すべき「“あるべき姿”と“現実”とのギャップ」です。

 新規事業に取り組む人たちの中には、「課題」を市場調査あるいはインタビューから、見つけ出せると考えている人たちがいるようです。しかし、調査やインタビューで見つかるのは、「課題」ではなく「問題」です。企業は、その問題を解決した先の「あるべき姿」がどういうものなのかを、何としてでも実現したいと思うことが求められます。その情熱や意欲なくして、「課題」にはなりません。「課題=問題×意欲」なのです。

SHARE

関連記事

企業にCDOが求められる3つの理由

2021.07.16

ニューノーマル時代にビジネスはどう変わるのか第30回

企業にCDOが求められる3つの理由

インフラ試験の継続実行は、本当に必要なのか?

2021.07.02

DXを加速させるITシステムの運用改革第41回

インフラ試験の継続実行は、本当に必要なのか?

有識者が解説する「誤解だらけのサブスクとDXの関係性」

2021.06.25

デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第68回

有識者が解説する「誤解だらけのサブスクとDXの関係性」

ゼロトラストを目指し境界防御から無害化に、ネオファースト生命はどう移行したか?

2021.06.16

セキュリティ対策に求められる新たな視点第24回

ゼロトラストを目指し境界防御から無害化に、ネオファースト生命はどう移行したか?

JALは新しいナレッジシステムで、次世代のコンタクトセンターを目指す

2021.06.11

いま求められる“顧客接点の強化”第36回

JALは新しいナレッジシステムで、次世代のコンタクトセンターを目指す