そうした企業体質に変革するためには、事業構造、収益構造、財務構造を三位一体で変化させることが求められます。
このうち事業構造については、主にキャッシュフローの話になります。これまで上場企業では、特定の単一の事業に専念することが望ましいとされてきました。さまざまな業態の事業を展開する会社は「コングロマリットディスカウント」と呼ばれ、株式市場では時価総額や株価がディスカウントされていました。
しかし今回のコロナで明らかになったのは、単一の業態や特定のチャネル、特定の顧客層にフォーカスしていると、そこが影響を受けた時に売上が一気に低下してしまうということです。
特に外食や小売は、緊急事態宣言下での2カ月半で売上が昨年度対比で9割減といった企業が続出しています。今後もこうした危機が来るとすれば、右肩上がりの成長は想定できません。従って今後中長期的には、事業展開もチャネルも顧客層も、多重的、多層的にしていく必要があるのです。
収益構造については、損益分岐点のハードルを下げて、より少ない売上でも利益を出せる体質に変えていく必要があります。
財務構造については、従来はROE(自己資本利益率)が高いことが求められていましたが、これからは総資産をいかにうまく使って利益を生み出しているかを図るROA(総資産利益率)が重視されるべきです。さらには自己資本を拡充して強靭な財務構造に変革していくことも求められています。
このような事業構造、収益構造、財務構造の変革を三位一体で改革していくことは、短期的なリストラなどでは達成できません。今回のコロナですべての人と組織に求められているのは、「シンカ」です。それは、「真価」であり「進化」です。さらには、企業DNAまでをも刷新していくようなトランスフォーメーションが求められていると言えるでしょう。
数年おきに危機が来る中で事業を継続していくには、いかに対応力のある組織を作るかが重要となります。そうした中では、自らが持続可能なビジネスの形成を追求し、持続可能な社会の形成に貢献していかなければなりません。