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「自由な組織が新しいビジネスを生み出す」というわけではない
2021.03.26

ニューノーマル時代にビジネスはどう変わるのか第24回

「自由な組織が新しいビジネスを生み出す」というわけではない

著者 三谷 慶一郎

新規ビジネスは小さくスタートし、リスクを発見したら迅速に対応すべし

 ただし、多くの日本企業において従来から行われているビジネスの効率化を目的とし、リスクを排除するようなマネジメントでは、さすがに新規ビジネスは生まれにくいでしょう。過剰な管理がイノベーションを阻害するのは、やはり事実だと思います。従って、ビジネス創造のためには今までと異なる新しいマネジメントを考えなければなりません。

 経済産業省が2019年に提示した「DX推進指標」の中の「仕組み」という項目にそのヒントがあります。ここでは「挑戦を促し失敗から学ぶプロセスをスピーディーに実行し、継続できる仕組みが構築できているか」ということが問われています。

 具体的には「挑戦を促し失敗から学ぶプロセスをスピーディーに実行し、継続するのに適したKPIを設定できているか」「そのKPIに即したプロジェクト評価や人事評価の仕組みが構築できているか」「そのKPIに即した投資意思決定や予算配分の仕組みが構築できているか」ということが求められています。つまり、従来とは異なるKPIを設定し、それをベースにして評価し、意思決定することが有効なのです。

 ビジネス創造を行う組織のKPIを設定するときに最も注意しなければならないのは、短期的に大きな売上等のビジネスボリュームを求めないことです。「リーンスタートアップ」とよく言われている通り、まずは最低限のサービス実装から始めることが有効です。大きな企業ほど大きな事業目標を求めがちではありますが、新しいビジネスに対しては、極力小さく始めることにこだわるべきです。

 また、短期間で成果を求めない方がよいということもよく言われますが、個人的には大きなビジネスボリュームを求めないのであれば、短期間に利益を求めてもかまわないと考えています。デジタルビジネスの推進においては何よりスピードが大切ですし、利益が出る、つまりビジネスモデルが成立することを早期に見極めることはとても重要です。黒字化の目途さえたてば、デジタルビジネスの場合は比較的容易にスケールアップさせていくことも可能です。

 もうひとつ重要なこととして、リスクに対する考え方を抜本的に変えることがあげられます。これまではビジネスを実際に開始する前にできるだけリスクを排除する、「事前」に重きを置いたマネジメントが行われてきました。

 市場に出すまでに複数のゲートを設けて、ビジネスの実現性を何度も評価する「ステージゲート法」がその典型です。新しいビジネスを様々な観点から、いろいろなチェック担当部署がダメ出しをしながら事業失敗のリスクを減らしていくわけです。

 しかし、現在のような過去の常識が通じにくい環境変化が激しい環境においては、事前に全てのリスクを把握すること自体をあきらめざるを得ません。とはいえ、リスクを無視するわけにもいきません。

 これからは、ビジネスを開始した後、市場の反応を見ながらリスクを把握していくような「事後的なリスクマネジメント」が必要になると考えます。新しいビジネスを小さく始めながら、思いもよらぬリスクに気づいた段階で、迅速にビジネスを調整していくことが有効なのです。サービス内容を書き換えやすいというデジタルビジネスのメリットを活かしたマネジメントだとも言えます。

 新しいデジタルビジネスを持続的に創造し続けるためには、組織に「新しいマネジメントの仕組み」を持つことが必要になります。決して容易なことではありませんが、これをうまく実装できた企業は、これからのニューノーマルの時代において確実に素晴らしいパフォーマンスを発揮していくことでしょう。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです。

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