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産業医・大室氏が語る「通勤という基準のないDX時代の“働ける”を、どう定義するか」
2021.03.03

ニューノーマル時代にビジネスはどう変わるのか第22回

産業医・大室氏が語る「通勤という基準のないDX時代の“働ける”を、どう定義するか」

著者 Bizコンパス編集部

大室正志氏
 産業医科大学医学部医学科 卒業。専門は産業医学実務。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社統括産業医、医療法人社団同友会産業医室を経て現職。メンタルヘルス対策、感染症対策など企業における健康リスク低減に従事。現在約30社の産業医業務に従事。医療法人同友会顧問。社会医学系専門医・指導医。
著書『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)

 AIやRPAの普及による業務自動化やリモートワークの拡大により、近年、働き方は劇的に変化しています。こうした変化は業務を効率化する一方で、環境変化に対応できずストレスを抱え、メンタル不調に陥るビジネスパーソンを増加させる可能性があります。今後、企業がDXを加速させるには、同時並行でビジネスパーソンのメンタルヘルスのケアが欠かせません。DX時代に求められる健康管理の施策について産業医の大室正志氏にお話を伺いました。

通勤のないリモートワークがメンタル不調の早期発見を困難にしている

―― コロナ禍で変化した労働環境に適応できず、メンタル不調を訴える人が増えたといわれていますが、実態はどうでしょうか

 確かに、コロナ禍で人間関係や生存、自身の将来に不安を感じる人は増えましたが、一方で通勤がなくなり子育てがしやすくなったなどの理由で、ストレスから解放された人も相当数います。私が担当している会社のストレスチェックの結果を見ても、数字的にはメンタルの不調を訴える人が急増したエビデンスはありません。しかし、その内訳を見ると、メンタル不調の原因としてコロナによる不安をあげる人が多く見受けられます。

 よく安全安心と言いますが、後者の安心という概念は主観ですから、コロナ禍が長期化すれば、どれだけ周りから「大丈夫」と言われても、不安の感受性が高い方ほど抑うつ症状が強まっていきます。東日本大震災のときも、放射能汚染への不安がいつまでも解消されず、抑うつ症状を訴える人が増加しました。こうした抑うつ症状は、悪化する前に対処する必要がありますが、リモートワークだと早期発見が難しいことが問題です。

―― 毎日、会社で顔を合わせていれば、誰かが不調に気付きますが、リモートだと相手の状態が見えませんからね

大室正志氏

 コロナ以前は、週に5日通勤できることが、ある意味で健康のバロメータになっていました。メンタルに問題をきたすと通勤が困難になるので、これが不調を表す有力なサインとして機能していたのです。しかし、リモートワークの場合、始業ギリギリまで寝ていてもログインボタンを押せば、見かけ上出社になるので、メンタル不調のサインを検知できにくいのです。

 メンタル不調のときは、脳のCPUが低下している状態にあるので、人とのコミュニケーションが億劫になりがちです。そのため上司から電話がかかってきても、受話器を取るのがしんどくなってきます。それでも症状が軽いうちは、コールバックできますが、悪化するとそれもできなくなり、やがて完全に連絡が取れなくなるといったケースがよく起こります。

 リモートワークでメンタルの不調を早期発見するための有効な手立ては、Web会議での顔出しです。顔が見えていれば、ちょっとした冗談に笑えるかどうかで、ある程度の判断ができます。ジョークというのは、頭を半回転ひねらないとおもしろさを感じられないので、笑えない時点で脳の働きが低下している可能性があります。そういう意味でメンタル不調の早期発見には、全部ではなくていいので、特定のWeb会議では全員顔出しするなどのルールを設けることが必要だと考えます。

 予防医学の世界では、健康増進を図り病気を防ぐ「一次予防」、病気が重篤化する前に早期発見・治療する「二次予防」、そしてリハビリなどを通じて症状の悪化を防ぐ「三次予防」という概念がありますが、リモートワークにおける「二次予防」の実践が、これからの課題になると思います。

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