ここまで見てきたように、DXはIoT、AI、クラウドという3つの要素によって構成されますが、この3つの連携をより高めるためのテクノロジーが存在します。それが、「5G」です。
5Gとは「第5世代移動通信システム」のことで、4Gに続く次世代のモバイル通信です。4Gが5Gに変わることで、「(1)高速・大容量データ通信」、「(2)大量端末の接続」、「(3)超低遅延・超高信頼性」が実現します。
「(1)高速・大容量データ通信」とは、現在の4Gの20倍の高速化・大容量化したデータ通信で、10G~20Gbpsといった超高速な通信が可能になります。これは2時間の映画を3秒でダウンロードできる速さです。
「(2)超低遅延・超高信頼性」とは、いかなる場合でも、低遅延で通信できるという意味です。遅延時間は、4Gの10分の1である1m秒となっています。自動運転や緊急時の確実な通信が求められる災害対応など、通信が遅れることで事故につながりかねない場面での使用が想定されています。たとえば、リアルタイムに遠隔地のロボットを操作するなど、利用者がタイムラグを意識することのない場面にも向いています。
「(3)大量端末の接続」とは、現在の10倍といった接続端末数のことです。4Gでも1平方キロメートル当たり約6万台の端末を接続できますが、5Gでは1平方キロメートル当たり100万台の端末が同時接続できます。スマホやPCだけではなく、身の回りの様々な機器がネットに接続される時代を迎えようとしています。
IoT、AI、クラウド、そして5Gは、CPSの実現に不可欠なテクノロジーと言えるでしょう。すなわち、これらテクノロジーをうまく使いこなすことが、DXの実現には不可避なのです。
これまでの「デジタル化」と「DX」を同じ意味で捉えるべきではありません。デジタル技術の進化によって、ビジネスのスピードや人々の価値観の変化に対応できる企業の文化や風土へと変革することが、DXです。変革に終着点はありません。変革を当たり前に続けることができる企業に変わることが、DXであるとも言えるでしょう。