AIで導かれた最適解を使い、ビジネスを動かすためには、計算能力やデータの保管容量に制約がなく、必要な機能や性能を俊敏に調達できるクラウドコンピューティング(以下、クラウド)の力を借りる必要があります。
クラウドとは、「コンピュータの機能や性能を共同利用するための仕組み」です。例えば、大手クラウド事業者は、それぞれ数百万台ものサーバーコンピュータ(複数ユーザーで共同利用するコンピュータ)を所有し、世界の各所に設置しています。大量に購入することで単価が抑えられ、利用者側も安い料金でコンピュータが利用できるようになりました。
クラウドがなかった時代、コンピュータを利用するためには、ハードウェアやソフトウェアを自分たちの資産として購入し、自ら運用管理しなければなりませんでした。しかし、クラウドの登場により、コンピュータをサービスとして使えるようになったのです。利用者は初期投資を必要とせず、使った分だけ利用料金を払えばすぐにでもコンピュータが利用できるようになりました。このようにクラウドは、コンピュータの使い方の常識を根本的に変えてしまいました。
クラウドはいまや、オフィスツールや電子メール、ファイル共有などのシステムに留まらず、安心、安全が高度に求められる基幹業務システムや銀行システムといったミッション・クリティカル(24時間365日、障害や誤作動などで止まることが許されない)なシステムにも使われるようになっています。
2018年、日本政府は政府機関の情報システムはクラウドサービスの採用を優先するとの方針(クラウド・バイ・デフォルト原則)を決定しています。米国では、CIA(中央情報局)やDOD(国防総省)も使っています。高度な機密性や可用性、信頼性が要求される政府機関もクラウドを利用する時代になりました。
ビジネスの不確実性が高まり、資産を持つことが経営リスクとして認識されるようになったいま、変化に俊敏に対応することが経営課題として強く意識されるようになりました。一方で、セキュリティに関わる脅威の高度化や多様化に対処することが、企業にとっては大きな負担となっています。
クラウドはこうした状況に非常に適しています。企業はクラウドを利用することで、自らは資産を持つことなく、コンピューティング資源を必要な時に必要なだけ経費として使用でき、運用管理やセキュリティ対策を高度な専門家集団に任せられます。DXを推進するのであれば、クラウドの利用は欠かせないといえるでしょう。