「デジタルによって変わっていく社会の変化に企業が対応すること」とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか? そのヒントは、日々生まれ続けるデータを活用することにあります。
我々が毎日過ごしている、現実世界の様々な「ものごと」や「できごと」は、モノに組み込まれたセンサーやモバイル、ソーシャルメディアのような現実世界とネットとの接点を介して、リアルタイムにデジタルデータに変換され、クラウドに送られます。
インターネットに接続されるモノの数は2021年には300億個にもなるとされ、それぞれのモノには複数のセンサーが組み込まれています。私たちは、膨大なセンサーに囲まれた世界に生きているということです。それらのセンサーが取得した大量のデータ(ビッグデータ)によって、デジタルの世界に「デジタルツイン」と呼ばれる現実世界のデジタルコピーが生成され、リアルタイムにアップデートが繰り返されていきます。
ビッグデータから誰が何に興味を持っているのか、誰と誰がつながっていているのか、製品の品質を高めるにはどうすればいいのか、顧客満足を高めるためには何をすればいいのかなどを見つけ出さなければなりません。そのために人工知能(Artificial Intelligence/AI)技術のひとつである機械学習を使って分析し、ビジネスを最適に動かすための予測や判断をおこないます。
それを使って、サービスを動かして、機器を制御し、情報や指示を送れば、現実世界が変化し、デジダルデータとして再びネットに送り出されます。
インターネットにつながるモノの数は日々増加し、Webサービスやソーシャルメディアもまたその種類やユーザー数を加速度的に増やしています。現実世界とネットの世界をつなげるデジタルな接点は、増加の一途です。データ量はますます増え、よりきめ細かなデジタルツインが築かれてゆきます。つまり、デジタルツインの“解像度”が、時間的にも空間的にも、大幅に高まりつつあるのです。そうなれば、さらに的確な予測や判断ができるようになります。
この的確な予想と判断を、継続的かつ高速に機能させることで、ビジネスは常に最適な状態に維持されることになります。いわば、デジタル世界と現実世界が一体となって、リアルタイムに改善活動を繰り返すようなものです。
このように、現実世界をデータで捉え、現実世界とデジタルが一体となってビジネスを動かす仕組みを、「サイバーフィジカルシステム(Cyber-Physical System/CPS)」と呼んでいます。私たちのフィジカル(物理的)な日常は、もはやデジタルと一体となって機能しています。そんなCPSが、私たちのビジネスの基盤になろうとしています。
つまり「DXを実装する」とは、CPSをビジネスプロセスに組み入れることなのです。
次回は、CPSを支えるテクノロジーについて話をしたいと思います。