2021.01.27
ニューノーマル時代にビジネスはどう変わるのか第17回
「DXを実装する」とは、○○をビジネスに組み入れることである
著者 斎藤昌義
時間感覚の変化という「新しい常識」に追従できるか?
ここでいう「デジタル技術がもたらす新しい常識」とは、具体的にいえば、「時間感覚が劇的に変化する」ことを意味します。これまでのように時間をかけて市場を見極め、完全な計画を立ててPDCAを確実にまわすといった時間感覚では、市場の変化に追従することも、先取りすることもできません。
情報の伝達やコミュニケーションは一瞬に行われ、顧客の期待やニーズはめまぐるしく変わります。このことを直ちに理解し、現場が即応できることや、市場の変化に合わせて戦略をダイナミックに変え続けなければ、事業を継続することが難しい時代になったのです。
そんな新しい時間感覚を、常識として当然のことと受け止め、変化に俊敏に対応できる企業へと変革することが、いま企業には求められています。
DXとは、クラウドサービスを駆使してリモートワークを実現することや、AIやIoTを使って新規事業を立ち上げることと同じではありません。デジタル技術がもたらす新しい常識、すなわち、人の価値観や行動様式、競争優位の根源や競争の原理が、デジタルによって変わっていくことに、企業が適応することです。
つまり、自社のビジネスにクラウドやAIといったデジタルツールを導入したとしても、それだけではDXに取り組んでいることにはなりません。デジタルツールを使うことを目的とするのではなく、デジタルを前提とした新しい常識に適応することが目的です。そのためには、これまでのビジネスプロセスやビジネスモデル、あるいは組織のあり方や社員の考え方を変革することが、DXなのです。