― デジタル化が人間の仕事を奪い、大半の人が今までに存在しない職業に就くといわれる時代に、どのようなスキルを磨けば仕事に役立つのでしょうか
デジタル化は「仕事が変わる」と「働き方が変わる」という2つの変化を引き起こします。僕らが就職した頃、キーパンチャーやタイピストが花形職業でしたが、今はほとんど存在していません。一方、この25年間にYouTuberやゲームクリエイター、データアナリスト、Webデザイナーなど新しい仕事が大量に生まれました。「仕事が変わる」とは、そういうことです。
AIが人間の能力を超えてシンギュラリティに到達する2045年には、今の常識では想像もつかないほど新しい仕事が増えているはずです。その仕事は、いずれもデジタルベースになると思います。そういう意味で、先ほどお話ししたITリテラシーは、すべての基礎になるスキルといっていいでしょう。
「働き方が変わる」は、AIやロボットの進化によって起こる変化を意味します。今、人間が担っている仕事の半分は、やがてAIやロボットに代替されるでしょう。しかし、それは決して悲観的な話ではありません。なぜなら、AIやロボットは仕事を代替しますが、そこから生じる付加価値や儲けまで奪っていくわけではないからです。我々はその利益を分配し、その上で自由に使える時間を手にできるのですから、未来は希望に満ちていると思いませんか。
これからの時代は、自由に使える時間と自身のスキルをモジュール的に組み合わせて、いろいろな人と距離を超えて一緒に仕事ができると考えています。簡単に言えば、3足も4足も草鞋を履くことが当たり前で、働き方を自分で自由に設計できる時代になるのです。
― しかし、働き方を自由に設計できる人は、その土台として十分なスキルセットやマインドセットを身に付けているのではないでしょうか。そうだとすると、そのスキルセットやマインドセットを、どうやって身につけるかが、課題と言えます
これからのビジネスに不可欠なスキルセットは、「IT」と「ビジネス」、そして「グローバルコミュニケーション(英語力)」の3つだと考えており、iUでも、そのスキルセットを身につけることを目標にしています。しかし、スキルセットを機能させるには、ご指摘の通りマインドセットを整えることが重要です。
マインドセットが重要な理由は、これからは法則がなくなるからです。過去数十年間、我々はCPUの処理速度の向上率を示す「ムーアの法則」を使うことで、世の中の進化を読み解くことができました。しかし、これからはコンピュータの速さではなく賢さの勝負になるので「ムーアの法則」は役に立ちません。法則のない世界で、唯一確実なことは「変化する」という事実だけです。
予測不能な変化が起きる世界では、「変化を楽しめる」と「学び続ける」というマインドセットがなければ、能力を発揮できません。逆に言えば、そのマインドセットさえあれば、社会の変化を常にポジティブな要素として捉えることができます。