この書籍ではDX人材に求めるスキルだけではなく、必要となるマインドセット(心構え)についても言及しています。
DX人材は、「しなやかマインドセット(Growth mindset)」を持たなければならないといいます。この「しなやかマインドセット」は、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエックによって定義されたもので、「自らの知能、才能や人格は成長できると信じられる人」が持つ心構えのことです(逆に、「自分の才能はこれ以上何をしても伸びないと信じている人」の心構えを「硬直マインドセット(Fixed mindset)」と呼ぶそうです)。
「しなやかマインドセット」を持つ人は、自分の才能を伸ばすために、ひたすら学び続けたいと考えます。いつも新しいことにチャレンジすることを望みます。もし壁にぶつかってしまっても、いつか突破できると信じ耐えようとします。何かを得るためには、努力をすることは欠かせないと理解しています。自分に浴びせられる厳しい批判に対してもくさらずに真摯に学ぶ姿勢を見せます。他人の成功に対してさえも、学びや気付きを得ようとします。
DXの推進は、上司からの指示通りに対応することで何とかなるものではありません。環境変化によって過去に学んだことが役に立たなくなったり、他の異なるスキルを迅速に身につける必要が生じたりすることも十分に起こり得るでしょう。そんなときでも「しなやかマインドセット」を持つ人材は、どんどん新しいチャレンジを始められるのです。
「しなやかマインドセット」を持つ人は、必要なDX人材を、外部から採用するよりは、自組織にいる人材を抜擢し育成しようとするそうです。つまり、自分だけでなく、他人に対しても、力量が伸びる可能性を信じているということです。
自組織にいる人材の育成を優先することについては、筆者も強く同意します。本格的なデジタル活用の時代が到来して間もない今、優秀なDX人材がどこにでもたくさんいるとは思えません。また自組織にDX人材候補がいないように見えるのは、ポテンシャルがないわけではなく、そのような経験を積ませていないだけのことかもしれません。
DX人材を確保するなら、ぜひ社内人材の育成にも目を向けていただきたいと思います。