企業におけるデジタル技術を活用する仕組みのことを「デジタルガバナンス」と呼びます。デジタルの力によってビジネスを推進することを統治するメカニズム、これがデジタルガバナンスです。つまり、DXを進めるための戦略、それを管理する組織、そして推進力の源になる人材、これらを含めた総合的なデジタル活用環境を整えていくことが企業において最も重要なことなのです。
経済産業省では、2019年から「デジタルガバナンス・コード」に関する検討が行われています。
これは、企業がDXに取り組んでいくために実践すべき事項をとりまとめたものです。企業は自らの組織がこのデジタルガバナンス・コードを遵守していることを投資家や従業員、取引先などといったステークホルダーに対して開示することによって、自社が「DXを進めるための仕組みを持っている」ことをアピールすることができます。
さらに、このコードを守っている企業であることを客観的に評価し、DXを進めるための準備が整った“DX-Ready”企業として認める「DX認定制度」も開始されています。
デジタルガバナンス・コードは、以下のように大きく6つの項目から構成されています。
(1)「経営ビジョン・ビジネスモデル」:デジタル技術による環境変化を踏まえた経営ビジョンとその実現に向けたビジネスモデルを示していること
(2)「戦略」:ビジネスモデル実現に向けて、デジタル技術活用に関する戦略を示していること
(3)「組織づくり・人材・企業文化」:戦略推進に必要な体制・組織等を示していること
(4)「ITシステム・デジタル技術環境整備」:戦略の中で必要なITシステム・デジタル技術活用環境の整備の方向性を示していること
(5)「成果と重要な成果指標」:戦略達成度を測る指標を定めた上で自己評価を行っていること
(6)「ガバナンスシステム」:経営者のリーダーシップの下、自社のITシステムの現状課題を把握していること/サイバーセキュリティ対策を推進していること/経営者が自ら戦略推進状況を対外的にメッセージ発信していること
DXを進めるための仕組みを持っている企業と、それを持たない企業とでは中期的にみて、パフォーマンスに大きな差が生まれる可能性が高いでしょう。一方、企業内にこの仕組みが整っているかどうかは、外からは見ることができません。その意味で、デジタルガバナンス・コードによって企業のDXの準備状況が可視化されるということは、有意義だと考えられます。