3密を避けるのが日常となるこれからの社会で、在宅勤務ができない製造現場を支援していくため、製造企業はどのようにデジタル技術の導入を検討すればよいのでしょうか?
前回は、ニューノーマル時代に製造業はどうあるべきかについて、トヨタ自動車や愛知製鋼など多くの製造業との共同研究に携わってきた中京大学・輿水大和名誉教授が、現場の“リアル”交えて解説をしました。今回は、工場長や部門統括長など現場の意志決定者が製造業DXでどのような点を考慮すべきかについて、輿水名誉教授が解説します。
「コスト削減」「不良品ゼロ」だけを目指す時代は終わった
日本の“モノづくり”を支えてきた製造業の生産ラインは、試行錯誤を重ねて製造プロセスを極限まで効率化し、「ガラス細工」のように磨き上げられてきたものです。例えば、アッセンブリ(組み立て工程)を考える時、不良品を最小限にし、かつ最も短時間となるための生産ライン設計をとことん追求してきました。
しかし現在は、生産ラインに作業員が入る場合、コロナ対策をしなければなりません。密閉・密集・密接という「3密」のラインを持つ工場では、これまでのラインを変更しなければいけません。人と人が密にならないようにアッセンブリの順番を再検討した結果、作業時間が仮に1~2割増えたとしても、現場としてはそれを受け入れる必要があります。ラインに対して、従来のように、まっしぐらに「コスト削減」や「不良品の発生ゼロ」だけを目指す時代は終わったといえるでしょう。
3密を避けるためにラインをリフォームするとなると、業務プロセスをイチから見直すことになります。とは言え、磨き上げられたラインは、簡単に変えられるものではありません。慣れ親しんだプロセスを変えることでの現場の反発もあるでしょう。当然、相応の投資も必要となります。