新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中であらゆるビジネスがストップし、従来のビジネスからの変革が求められています。
私が住んでいるフィリピンでは、留学業界が甚大な影響を受けています。フィリピン国内への渡航が制限されているため、留学生の募集や受け入れを停止しています。
そうしたなか、フィリピンの語学学校「CNE1」では、オンラインツールを活用した、留学ともオンライン英会話とも異なった新たなコンセプトの英語教育サービスをスタートしています。
“コロナ前”のビジネスができなくなった経営者は、“コロナ後”のビジネスを、どのように変えていこうとしているのでしょうか。同校の日本人共同経営者の井坂浩章さんに話を聞きました。
フィリピンの農村に、シリコンバレーを作りたい
――新ビジネスの前に、”コロナ前”のビジネスについて聞かせてください。フィリピンの語学学校といえば、セブやバギオといった都市が有名です。しかし、井坂さんの学校は、マンゴーの木が茂る農村地帯のタールラック州サンマニュエル市にあります。なぜ、この地に語学学校をオープンしようと思ったのでしょうか?
井坂:この田舎町だからこそ、理想の学校づくりができると考えたからです。
もともとセブなどでは、既に韓国系の学校が増えており、埋もれる恐れがありました。加えて、この町に産業と雇用も生み出したかったという思いもあります。
米国のシリコンバレーは、かつて農業地帯でしたが、スタンフォード大学などの一流大学に優秀な学生が集まり発展しました。大学は寄付金を運用して優秀な研究者を集め、優秀な学生に奨学金を出し、長期的な視点で運営しています。
私が目指すのは、こうしたモデルです。シリコンバレーと比べれば小規模ですが、上質な教育機関を中心にして、長期的に地域と人を育てたい。私はこれを“マンゴーバレー”構想と名付けています(笑)。
現在は、講師・スタッフ合わせて約100名が働いています。さらに敷地内にはフィリピンの子どもたちが通う学校、フィリピン人向けの日本語学校、ICチップの工場やオーガニック農園まであります。
――しかし、先ほど話題に出たように、フィリピンの語学留学はセブが主流です。田舎町の語学学校が、メインターゲットである日本人の留学希望者を集めるために、どのような工夫をしているのでしょうか。たとえば、広告でアピールしているのでしょうか。
井坂:いえ、広告はやっていません。主にネットの口コミです。2010年の創業期にSNSの拡大が重なったことが大きいです。当時、日本で出始めだったツイッターを情報発信に使いました。
ツイッターのアーリーアダプターには、バックパック旅行などで海外に出て、SNSで情報の収集・発信をするアクティブな20代も多く、そうした方々が当校を利用されて口コミが広がり、開校2年目で生徒数は7〜8倍に増加しました。
最近は高校・大学、企業の語学研修も増えました。当校では視察の方に、授業、宿泊、食事など、全てのサービスを自由に体験していただきます。10年前では業界でめずらしかったキャンセル時の返金もいち早く導入しています。