この「過度な干渉」を防ぐことは、テレワークでは重要な要素といえそうだ。
2020年3月26日にILOが発表したメッセンジャー氏による記事「コロナ禍における効率的なテレワークの手引き(Keys for effective teleworking during the COVID-19 pandemic)」では、労働と生活の場所が同じテレワークにおいて、「働く/働かない」を、時間で明確に区切る「バウンダリ―(境界)マネジメント」が重要であると、指摘されている。
テレワーク中の仕事のオンとオフの切り替えは、とかく曖昧になりがちである。たとえば管理職が仕事で気になったことがあった場合、業務時間外でもすぐに部下を呼び出し、業務時間が過ぎてもオンラインで繋がりながら仕事を続ける、なんてこともある。長時間勤務や夜間・休日勤務にもつながってしまっては、従業員はオフィス勤務以上に疲弊してしまうことだろう。
同記事では“業務時間以外に仕事をしない能力は、休息と私生活を保証する”とも記載されている。従業員がテレワークでも健康的に仕事を続けるためには、企業が「この時間は仕事をする/しない」の基準を明確にすることが求められる。
フランスでは、時間外における企業の過剰な干渉から労働者を守る「つながらない権利」が存在する。この「つながらない権利」は、労働者の「働かない時間」を確保する対策として、2017年フランスで施行された労働法だ。具体的には、労働者が勤務時間外にメールや電話での対応を拒否する権利を認めている。
日本にはここまで具体的な法律はないかもしれないが、だからこそ、経営者、管理職側が「つながらないこと」に対して意識が持てるか否かが試される。テレワークをするのは従業員であるが、その“仕組み”を作れるのは、上に立つ上司、さらにその上の人間にほかならない。テレワークの成否を分ける鍵は、経営者と管理職が握っているのだ。