シアトルでは、テレワークへの移行は日本よりもスムーズに進んだように見える。
もともと成果主義が主体であるアメリカでは、テレワークとの親和性が高く、4人に1人がテレワーク経験を持つとされる。特にIT分野では単独で行う業務の比重が大きく、テレワークがしやすい環境にある。加えて、大手に限らずフレキシブルな勤務体制が主流で、共働きの子育て世帯などでは、子どもの病気や学校、習い事でのスケジュールに合わせてオフィスで時短勤務し、テレワークでカバーすることも日常的に行われている。
年に何度か降る雪で交通がマヒするシアトルでは、「悪天候によるテレワーク」が一般的だ。行政も公的援助で、企業のテレワーク導入を後押しする。その理由は、テレワークにより車の交通量が減ることで二酸化炭素の排出が抑えられ、環境保護につながるというエコの発想だ。緑と水に恵まれ、アウトドア産業が盛んなシアトルならではの取り組みと言えるだろう。
しかし、そんなテレワークに慣れている“シアトルっ子”たちも、カフェでのテレワークができないのが辛いのか、在宅勤務にもカフェ気分を持ち込んでいる。
たとえば、コーヒーへのこだわりもそのひとつ。普段は週末くらいしか時間をかけられないハンドドリップのコーヒーも、在宅勤務の今なら、平日を含めて毎朝楽しめる。コーヒー豆も産地別にオンラインで購入し、グラインダーでひきたてを味わう。
コーヒーのお供となるパンやペイストリーも手作り。発酵から焼き上がりまで時間がかかることこの上ないが、長らく自宅にこもる生活では可能に。こうしたアナログな手作業を挟むことにより、仕事でずっとPC画面に向かいっぱなしの「オンラインストレス」も解消できる。
音楽も大事。単調な作業をする時間は、お気に入りの音楽をノイズキャンセリング機能のあるイヤホンで聴きながら、仕事に没頭する。共働きで同じく在宅勤務のパートナーや、休校中で遠隔学習を行う子どもたちと同じ場所にいながらも、簡単に自分の空間を生み出せるお手軽なテクニックだ。