まだ本稼働から2カ月ほどですが、すでに新たなコミュニケーション基盤の導入効果が出ていると佐々木氏は指摘します。
「IP化により、明らかに電話のコストが抑えられています。さらに人事異動の際も配線を変える必要がなく、電話機を移動するだけで対応できますので運用面の負荷が格段に低減されました。故障対応も自前でできるので、ダウンタイムも最小化できます。そのうえ選挙や駅伝などの番組用に臨時回線を増設する場合も、社内で臨機応変な対応が可能です」


福島テレビのシステム構成イメージ

今後は、本社のみならず各支社のPBXの更改時期に合わせて各支社の内線も随時クラウドに切り替えていき、最終的には本社の代表番号ですべての支社に内線でつながる仕組みを目指しています。
複数台の電話を1台のスマホに集約する準備も着々と進んでいます。すでにトライアル運用でスマホを利用している佐々木氏は確かな手応えを感じています。
「いつ、どこにいても内線、外線がスマホ1台で受けられる利便性を肌で感じています。いずれは社員個人のスマホを使ったBYODを導入し、会社貸与の端末を削減したいと考えています。紛失対策としてWeb電話帳などの導入も検討していますが、会社貸与の端末より、触れている時間が長い社員個人のスマホのほうが紛失のリスクはかなり低いでしょう」
BYODを導入するには、社員の同意や制度の整備、セキュリティの担保などクリアすべき課題はありますが、導入により社外でも柔軟かつ安全にコミュニケーションがとれるようになれば、それが働き方改革の布石になると佐々木氏は期待を寄せています。
また、LAN、WANについても、10年先を見据えたゆとりある帯域設計としました。
「放送局として、映像伝送用のネットワークは別にあるのですが、社内LANでも映像伝送を想定した広帯域を確保しています。社内のどこからでも手軽にテレビ中継ができる時代を迎えても、SDNとの合わせ技で十分に対応できる設計にしているのです」
このように今回の社屋移転に伴い構築された統合ネットワークは、まだまだ大きなポテンシャルを秘めていて、佐々木氏は10年先の未来に向けた進化を明確にイメージしています。
「最初にシステムを利用するユーザーとして、イメージを最大限まで膨らませないことには、いいシステムは作れないのでは。システムの刷新においては、あれもやりたい、これも導入したいといった無理難題を聞き入れ、現実的なプランに仕上げてくれるパートナー選びこそがカギを握っているのかもしれません。次のフェーズではNTT Comと一緒に、信頼性、機能性を担保できた部分から随時クラウド化を進めていく予定です」
パートナーのサポートを受けたとはいえ、佐々木氏がこれだけのことを短期間で成し遂げた成功の一因は、間違いなく最初にユーザーとして壮大なイメージを描いたことと言えるのではないでしょうか。
※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。