課題解決のため竹下氏は、VDIのアップグレードを経営層に提案し、2018年度での実施の承認を受けます。プロジェクトを進めるにあたり、社員へのパソコン利用状況の調査を行ったところ、VDIを導入した当初の想定と大きくかけ離れていたことが判明します。
「5年前は予算の関係もあり、全社員の平均的な利用状況からリソースを見積もりました。当時のVDI設計では、サーバ1台に100台程度の仮想マシンを入れていくサイジングが一般的だったようです。うちはそれよりも若干ゆとりを持たせていましたが、社員の大半がパソコンを利用するピーク時には、普段では考えられないくらい動作速度が低下するケースがありました。
今回、全てのパソコンに常駐ソフトを入れ、1時間あたりどんな頻度でCPUやメモリが使われているかなどを1カ月かけて分析したところ、ピーク時のネットワーク速度は平均時より300倍遅くなるといった、ボトルネックが客観的に分かりました。VDIは全社員が毎日使うものですし、快適な操作性は生産性向上に直結します。アップグレードさせる新しいVDIでは予算の限り、アクセスのピークを迎えてもカバーできるリソースの確保を目指しました」
最良のアップグレードを求め、分析結果をもとに複数ベンダーと協議を重ねた竹下氏。各OSに割り当てるメモリを4倍にするなどリソース増強の目途を立てたものの、同じ時期に自社サイトで商品の紹介動画が動かないという事態が発生します。「リソース増強だけで本当に大丈夫なのだろうか。もっと確実にこの課題を解決する方法はないのか」と頭を悩ませていたときベンダーから追加で提案を受けたのが、3Dグラフィックスや人工知能など膨大なデータを高速処理する画像処理装置「GPU(Graphics Processing Unit)」を搭載した『NVIDIA GRID®』でした。
「採用すると投資規模が5年前の倍に膨らむこともあり、実際どのぐらい変化があるか概念実証(PoC)を3カ月実施しました。その結果、自社ウエブサイトのコンテンツ表示とレンダリング速度が約10倍向上しており、導入を決めました」