「デスクトップ仮想化(VDI)」はいつでもどこでも自分のデスクトップが使え、自社サーバ上でのインフラ構築だけでなくクラウドサービス(DaaS)も次々と登場するなど、現在進行形で注目を集める技術です。
機密データを一元管理することで高いセキュリティを保持しながら、モバイルを活用した機動力のある営業提案や、リモートワークによる働き方改革の推進などが期待できるとともに、すべてのパソコンのOSやアプリケーションを一括でスピーディーにアップデートできる利点もあります。Windows 7のサポート期限が2020年1月までとなり、企業は遅かれ早かれ社内のパソコンをWindows 10へ切り替える必要に迫られます。情報システム担当者にとっては、一台一台を手作業で設定しなくて良いのは、朗報でしょう。
このようにメリットの多いVDIですが、現在進行形の技術ならではの「課題」が生まれることもあります。5年前にVDIを導入したハーゲンダッツ ジャパン株式会社(以下、ハーゲンダッツ)の事例から、デスクトップ仮想化の最前線を紹介します。
当初は、狙い通りだったVDI導入の効果
プレミアムアイスクリームのパイオニアとして国内マーケットを30年以上にわたりリードしてきたハーゲンダッツ。5年前に全社員300人に対してVDI導入を推進した情報システム部マネージャー竹下新一氏は、リモートで業務ができるVDIの効果をすぐに実感したと語ります。
「弊社は大阪や札幌、福岡など全国に支店があり出張の機会も多いのですが、そのたびカバンにオフィス兼用のノートパソコンを詰め込んでいました。機密情報が保存された端末を持ち出すのはセキュリティ面からリスクがありますし、移動のときも荷物が重たい。VDI導入によって、支店にあるどのパソコンを使っても、メール、ドキュメントなど全て自分のパソコンと同じ環境で使えるようになり、最初はVDIに懐疑的だった社員もすぐに喜んでくれました。
業務を自宅に持ち帰って作業をするときも、VDIにアクセスすれば会社と同様の環境を再現できます。育児や介護などで在宅ワークが必要な社員にも好評で、現在でも働き方改革の一環になっていると思います。
また、支店から東京本社のサーバにアクセスするときネットワークの回線速度の影響を受けず、本社と同じようなレスポンスでシステムが使えるようになったことも、期待通りの成果でした」