新型コロナウイルスの流行によりオフィスへの出社ができなくなったことで、「紙」や「判子(はんこ)」ベースで行っている日本の商習慣の課題が顕在化しました。たとえば請求書の印刷や社内回覧、押印、封入、郵送、受取、保管など「書類処理のためだけに出社をした」という人も多いことでしょう。
請求書に関しては、2023年10月に「インボイス制度」が導入されます。これは、「いつ、どの事業者から、どんな商品を購入して、金額や消費税額がいくらだったのか」を明確にして適格請求書(インボイス)として残すことを義務付ける制度です。
インボイス制度に合わせて請求書のデジタル化ができれば、企業間のやり取りは一気にスムーズになり、コロナ禍におけるテレワークの普及はもとより、DXの推進に不可欠な企業間連携の強化につなげることが可能になります。
今回は企業間の請求書のやり取りを短期間かつ低コストでデジタル化できる、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の「BConnectionデジタルトレード」というソリューションを紹介します。
緊急事態宣言後、3人に2人が紙書類の処理のために出社した

NTTコミュニケーションズ株式会社
アプリケーションサービス部
第二クリエーション部門 担当課長
川淵聡氏
※本インタビューはWeb会議にて実施しました
BConnectionデジタルトレードのサービス開発に携わったNTT Comの川淵聡氏によると、日本企業にはDX推進を妨げる阻害要因が3つあるといいます。その3つとは、「(1)リモートワークで処理できない業務がある」「(2)企業とのやり取りがデータ化できない」「(3)自社システムの変更ができない」です。
「(1)の『リモートワークで処理できない業務』としては、取引先から送られてくる書類の確認や整理、取引先宛の書類の郵送、契約書の押印、社内の申請承認などがあります。『緊急事態宣言下における会社員の出社状況』に関するアンケート調査によると、4月の緊急事態宣言以降、こうした作業のために出社した人が7割近くいたという調査結果もあります」
(2)の「企業間の取引が電子化できない」の主な原因も、紙の書類にあります。たとえ自社内のシステムがデータ化されていても、取引相手会社がデータ化されていなければ、請求書や見積書や注文書などのやり取りは紙の書類でせざるを得ません。受け取った書類を担当者が手作業で自社の支払・承認システムへ投入する必要があるため、入力ミスが発生することもあります。
(3)の「自社システムを柔軟に変更できない」とは、特に社内システムが複雑なケースに見られると川淵氏はいいます。
「たとえば業務フローA、B、Cがあり、Cだけを変更しようとしても、A、Bに影響が及ぶため変えづらいという問題があります。さらに固定資産のため整理が難しく、新たなシステムを開発するにも時間と予算がかかるといった理由から、システムの変更に踏み切れないといった問題があります」