ほとんどの企業に存在する業務の1つに、「旅費(交通費)の精算」が挙げられます。
日本では、業務で社外に移動した時に発生する旅費は、社員が立て替えて支払い、月締めで社員が会社にその額を都度で請求する、というのが一般的です。しかし、外出が多い場合は、いちいち旅費を申請するのは面倒な話です。たとえ外出が少ない場合でも、そのためだけに申請をしなければならないのも、また面倒です。
こうした面倒な作業を、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)では「そもそも、旅費精算の申請自体を無くす」という、根本的な方法で解消したといいます。同社は一体、どうやって解決したのでしょうか。
毎月わずか数百円の交通費を申請するのは、生産的なのか?
NTT Com第四営業本部 営業推進部門の久野陽平氏は、以前から旅費精算の申請業務について、疑問を抱いていました。
「弊社の旅費精算は、オフィス近隣の得意先への訪問から、宿泊をともなう国内外の出張まで、すべて同じシステムで処理していました。申請の流れは、まずは自分が実際に利用した行程をシステムに入力し、上長に申請、承認を受けるという流れです。
しかし、実際の旅費申請の多くは少額で、わずか数百円の旅費精算のために、多くのコストが掛かってしまっていると感じていました」(久野氏)
久野氏がかねてから抱いていたこうした疑問は、3年前に行った社内調査で、確信に変わりました。同調査では、社員から働き方について多くの意見が出ましたが、中でも旅費精算に対する不満は強く、「旅費システムを起動し、細かい行程を入力する時間と手間にストレスに感じる」という声が多く寄せられました。
「弊社でも働き方改革が進んでおり、“限られた労働時間を生産業務に集中させたい”という思いが、これまで以上に強くなっています。旅費精算は、“非生産業務”の象徴的な業務の一つになっていました」(久野氏)
同じく第四営業本部の川島美由紀氏も、旅費精算に不満を抱く一人でした。
「旅費申請の作業は、スケジューラーを見て『この日はどこに行ったか』を確認しながら入力するため、非常にわずらわしいものでした。我々営業は、同じ得意先にたびたび足を運ぶケースが多いですが、たとえ行き先が同じであっても、一件一件入力を求められるというのも面倒くさかったです。
しかも、月締めで申請する必要があるため、締切は月末の忙しい時期に重なります。そのため、本来の業務と並行して申請しなければならず、非常に大変でした」(川島氏)