ロボットによって業務を自動化できる「RPA」活用し、業務効率化に取り組む企業が増えています。定型業務の多い金融系の大手企業で大規模な導入が進み、現在はメーカーや物流・倉庫などのサービス業、さらに大企業以外の中堅・中小企業にまで裾野は広がってきています。
そういった中、RPAで一定の成果を出した企業の次のステップとしてテーマになっているのが、「RPAの全社展開」と「AIによる自動化領域の拡大」です。しかし、多くの企業ではプロジェクトが停滞し、「RPAの活用が広がらずに放置されてしまう」ケースもあると言います。
どうすれば導入したRPAをより有効活用できるのでしょうか?多数の企業でRPA活用のコンサルティングを行うNTTコムソリューションズ株式会社の宿澤賢太郎氏が、ユースケースを交えて解説します。
なぜ、“RPAの放置”が起こるのか?
「RPAを導入した大企業のうち大半はトライアルを終え、全社展開などを目指した取り組みに進んでいます。経営層からのトップダウンで号令が下るケースが多いですが、その際にボトルネックとなるのが『自動化する対象業務が見つからない』『RPA特有の社内ルールが未整備』『RPAを担当する人材がいない』の3つです。これらが解決できないとプロジェクトはすぐに頭打ちになります。結果として、せっかく導入したRPAの活用が進まず“放置”されてしまうのです」と宿澤氏は説明し、その解決策について次のように語ります。
「まず対象業務の拡大では、現場業務を熟知した人材をRPA導入のキーマンとすることです。そのためには現場のキーマンにRPAで出来ることを『腹落ち』するレベルで理解してもらうことがポイントになります。私もRPAを導入済みの企業にヒアリングをする機会が多いのですが、現場の方からほぼ毎回『ユースケースを教えてほしい』という要望を頂きます。現場の理解がないままRPAが導入されたのだと感じるとともに、一般的なユースケースをご説明してもピンときていないことが非常に多いです」
そのためRPAの全社展開を推進するチームは、各現場で一緒に業務の棚卸をしながら、RPAの理解を深めるアプローチを繰り返すことが大切になると、宿澤氏は言います。
「現場では、担当業務の自動化を見るまでは本当の意味で『腹落ち』しません。そのため汎用的なRPA導入事例を共有するだけでなく、実際の業務をヒアリングし、簡易に実装したRPAが現場で動くのを見て頂いています。RPAで出来ること・出来ないことの差を体感できるアプローチが非常に重要です」
また全社展開という視点では、各部門から最低1業務はRPA導入の対象とすることもポイントとなります。
「効果検証だけであれば、調達や経理など定型業務の多いバックヤード部門が効果は出やすいです。ただそれでは、営業などその他の部門でRPA導入のイメージを深めることができません。営業部門であれば、定型的な見積作成や決裁業務は自動化することができます。そういった業務も対象にすることで各部門がRPAによる自動化の効果を実感でき、次のステップもイメージしやすくなります。一度現場のキーマンがRPAで出来ることを理解すると、次々と自動化の対象業務が掘り起こされるようになります」(宿澤氏)
