もう1つの移動時間については、時間そのものをゼロにはできないため、移動時間の活用が求められます。その際に注目すべきポイントは使いやすさと、二重登録だと川口氏は指摘します。
「移動時間に利用できる身近なデバイスといえばモバイル端末です。移動時間にメール閲覧を行っている方も多いと思いますが、それ以上の業務を行えていない状況だと思います。これにはいろいろな要因がありますが、一番は使いづらさが妨げになっていると思います。モバイル端末から複雑な情報を入力するのは難しく、ユーザーは使用を控えるようになり、結局は会社に着いてから行えばいいと考えるようになるのです。この使いづらさを解消するひとつの答えがチャットボットを使ったSaaS連携と言えます」
ここで川口氏は、チャットボットの導入事例をいくつか挙げます。
「1つ目は日報登録にチャットボットを利用したケースです。日報は入力までの手順が多いため、オフィスでしか記入・登録が行えず、従業員は打ち合わせ終了後に一度会社に立ち寄って作業していました。これが外出先からの直帰や在宅勤務といった柔軟なワークスタイル実現の妨げになっていたのです。
図3:日報登録チャットボットの導入前イメージ

そこでこの会社は、移動時間にモバイルデバイスで日報登録ができる仕組みを検討します。できる限りモバイルデバイスからの入力を削減するため、チャットボットを使ったSaaS連携を導入します。ポイントとなっているのは、最低限の入力で日報登録ができることです。
チャットボットがスケジューラーとSFA(日報)システムを連携することで、入力を簡略化してくれます。チャットボットはスケジューラーに外出がある場合、スケジューラー上の日付や時間、お客さま名、商談名などを自動的に日報へ引き継いでくれます。ユーザーは日報の内容を入力するだけなので、移動中でも簡単に登録できるのです。」
図4:日報登録チャットボットの導入後イメージ

続いては会議室予約にチャットボットを利用した事例です。メンバーと会議室の空き時間を検索し、資料共有を含めた開催予約を実施するのは、手間のかかる作業です。こうした時間と労力の無駄をなくすための仕組みを川口氏は紹介します。
「チャットボットは何の会議かを確認した後、これまでの傾向から招待するメンバーを確認してくれます。また人数に応じた大きさの会議室の空き時間を探し、時間の候補を出してくれますし、会議目的に応じた資料を推奨してもらうことも可能です」
図5:会議予約チャットボットのイメージ

上記のような仕組みを導入するには、AIの活用も重要になり、それには準備が必要だと川口氏はアドバイスします。
「会議のメンバー確認や資料の推奨のような自動化には、AIを活用していますが、それには教師データが必要です。教師データとは、AIが正解を学習するための、人が蓄積してきたスキル、ノウハウになります。難しいものではなく、過去にA社さまの打ち合わせには誰が参加していたか、といったことも教師データとなります。これらをSaaSを有効活用しデータとして蓄積しておくことが、AIを搭載したチャットボットの導入の鍵になってくると思います」