コロナ禍で在宅勤務を一気に進めたことから、各社・各人「テレワークはやってやれないことはない」と大多数が気づいたことであろう。しかしながら、その後、世間の流れとして「完全フル在宅勤務」とはなっていない認識だ。大手企業が目安・目標としている出社率も、以下の表のように様々である。

ザイマックス総合研究所の調査によると、オフィス出社率の目標値に「50%未満」「50%以上」と回答する企業はほぼ半数に分かれていることがわかる。さらに興味深いのは、将来以降として、50%未満を目指す社数が、現状の5割から2割まで下がることだ。つまり、「働く場所は最終的には会社」だと考える社数が多いことが伺える。
オフィス出社率の目標、将来以降

働き方改革の象徴の一つ「在宅勤務・テレワーク」は「生産性を高める」とされ、声高に推奨されていたにもかかわらず、何故このような「原点回帰」的なニーズが高まっているのであろうか?
それは急速・突貫で在宅勤務に取り組んだ結果、あるいは「やってやれないことはないが、やってみて初めてわかったデメリット」からの反動だと推測される。
筆者が「働き方改革・ワークスペース改革」を支援している多数の企業様での調査、聞かれる声から認識している在宅勤務・テレワークのデメリットは以下のようなものだ。
<社員個人にとっての在宅勤務・テレワークのデメリット>
・社員の自宅での環境の未整備(部屋数・広さ、備品類の面)
・集中して仕事ができない、やりづらい、家族や会社への双方への音の配慮(家族構成)
・精神面での不安、体の不調(孤独感、生活リズムの乱れ、暴飲暴食)
<会社にとっての在宅勤務・テレワークのデメリット>
・社員の労務管理、業務管理がしづらい(業務過多、余裕の状態がわからない)
・コミュニケーションが取りづらい(オンライン会議システムの問題、対面の気軽さが補えない)
・仕事の手順やノウハウ共有が図りづらい(必要情報や問い合わせ先不明、対面教育がしづらい)
働き方改革は本来「生産性を高める」「従業員の働きやすさを高める」ことは目的に活動してきたはずだ。しかし、その一環である在宅勤務やテレワークよりも、オフィスで働くことにメリットを感じているビジネスパーソンはかなり多いようだ。
コロナ禍、さらにはコロナ収束後・ニューノーマルでの“より良い働き方”を実現するため、私たちが設計・運用すべき「新しい働く場所・ワークスペース」とはどのようなものか?求められる機能・性能、私たちに自身に求められる行動とはどのようなものか?次回以降考えてみたい。