“3密を避ける”“非対面、非接触”…新型コロナウイルス(COVID-19)でのニューノーマル(新しい生活様式)によって、私たちの生活の中にデジタルテクノロジーが急速に浸透しました。ビジネスでのテレワークや医療でのオンライン診療、教育現場における遠隔授業などはその一例です。
こういった中で、デジタルテクノロジーの象徴的な存在であるAI技術も、急速な進化、実用化が進んでいます。NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)のAIエバンジェリストである島田健一郎氏は、「この5~6年で、特に画像や音、言語処理、などのAIの分析精度は、人間のレベルに近づいています。ビジネスでも、現場知見とAIの分析を掛け合わせた実用例が次々と出てきています」と話します。
日々進化するAI技術の現在地、それをビジネスにどう活用できるのかについて、島田氏が解説します。
コロナ禍で「AIは何の役に立つのか?」が社会に伝わった
コロナ禍によって、世界中の研究者がAIを活用した対応策を講じています。島田氏はその動向を日々注視しているといいます。
「人工知能研究開発ネットワーク(AI Japan R&D Network)」という国内AI研究者の情報ネットワークの調査では、ゲノム分析や診断予測と支援、感染シミュレーションなど、69に及ぶ領域でAIを活用した取り組みが進んでいることを公表しています。
こういった取り組みは国内だけでなく世界中で進んでいます。例えば、スタンフォード大学は、世界的なデータ分析のコンペの場であるKaggle上でCOVID-19のオープンワクチンプロジェクトなどが展開されています。
現状のCOVID-19ワクチンは、『分離しやすく、医療機関などに搬送できないため実用化が難しい』という課題があります。それに対して、オープンなプロジェクトとして世界中のデータサイエンティストたちがAIや機械学習を活用して『なにが原因で分離してしまうのか』といったことを突き止めようとしています」
AIは感染症対策として、治療薬開発、感染シミュレーション、遠隔環境整備など、さまざまな側面で貢献できる技術です。
「新型コロナウイルスによって進んだ研究は、将来、まったく新しい感染症が再度発生した際にも役立つはずです。そういった意味で、今回のコロナ禍によって『AIは社会のためにどう役立つのか?』という疑問への答えや、今後の可能性が目に見える形となったといえます」(島田氏)