ここまで最近の自然言語処理技術を取り上げてきましたが、この技術を生かした研究の一つとして“Fake News Detection”(偽情報検知)があります。
Fake News(フェイクニュース)の研究においては、いかにFake Newsを生み出すかという取り組みがあり、その一つがGROVERという取り組みです。GROVERはワシントン大学とアレン人工知能研究所が開発したものであり、いくつかのinput情報(Domain(ドメイン/メディアタイプ)、Date(日付)、Authors(著者)、Headline(見出)、Article(本文))を入れてしまえば、簡単に各種のニュース風に、記事を生成できてしまいます。
下記の記事は、私がGROVERのデモサイトで生成したFake News(偽記事)です(内容はNTTコミュニケーションズの収益が10兆円に達したというニュース)
(生成された偽記事)
この取り組みにおいては、偽記事を検知するFake News Detectionの仕組みも同時に開発されており、Fake Newsの検出力について、論文中でも記載されています。
下の図にあるのが、他の言語処理モデルとの比較です(BERTやGPTなど、さきほど紹介した言語モデル。ちなみにGPTは、論文投稿時期から前のバージョンのGPT-2となっております)。自分で生成したFake Newsについても、高い精度で検出できていることが分かります。Groverは「人間が書いたニュース」と「AIが書いたフェイクニュース」を92%以上の正確さで区別可能ということもアピールされています。
今後、コロナ禍や各種災害時に、悪意を持って機械的に大量に生産されてくるようなFake Newsを見抜く一つの手段として期待できます。
ここまで3回に渡り、AI技術がコロナ禍を契機としたニューノーマル時代において、どのように活用されるのかを様々な視点から紹介しました。今回のコラム以外にも、最新のAIトップカンファレンスでは、次々に新しいAI技術が生まれています。「AIで社会を進化させる」ことに大きな期待と好奇心を持ちながら、引き続き研究開発に取り組んでいきたいと思います。
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