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AIはどうやって、新型コロナウイルスの治療/診断/予測をしているのか?
2020.07.15

With/AfterコロナにおけるAI技術の可能性第2回

AIはどうやって、新型コロナウイルスの治療/診断/予測をしているのか?

著者 島田健一郎

 AI技術は、新型コロナウイルスに対して、どのような解決策を示してくれるのでしょうか。前回に引き続き、コロナと闘うAI技術について、事例とともに取り上げていきたいと思います。

 なお、新型コロナウイルスの正式名称は、International Committee on Taxonomy of Viruses (ICTV)において“severe acute respiratory syndrome coronavirus 2” (SARS-CoV-2)と決まりました。病気の名称はCOVID-19ですが、本記事では新型コロナウイルスを「SARS-CoV-2」として記載します。

治療のためのAI技術

 まずは、ウイルスに効果的な薬の開発に、AI技術が活用されているケースから紹介します。

 そもそも薬というものは、ウイルスのタンパク質構造の形に当てはまる化合物が結合し、タンパク質の働き方を変えることで、病気を治します。現在では、コンピュータを用いて、バーチャルでタンパク質と化合物が結合するかを何度も試す方法が増えています。バーチャル空間上で薬となる候補を絞った上で、実際に薬の作用の効果があるかどうかを実験するのが、創薬の一つの流れとなります。

 問題は、このウイルスのタンパク質構造を、どのように解明するかにあります。タンパク質はDNA構造パターンに基づくアミノ酸配列から決まります。アミノ酸配列からタンパク質構造(3次元構造)を推測することを“タンパク質構造予測”と呼びます。しかし、その予測は容易ではありません。現在も困難な研究テーマとなっており、様々なアプローチが考え出されている状況です。

 このような中、Deepmind社がAI技術を用いて取り組んでいる”Alpha Fold”というタンパク質構造解析プロジェクトにおいて、今回のSARS-CoV-2のタンパク質構造の解明にもチャレンジしています

 Alpha Foldのアプローチは、以下の2段階に分けられています。

(1)ニューラルネットワークを用いて、アミノ酸のペア間の距離と、アミノ酸をつなぐ化学結合の角度を予測する
(2)最もエネルギー効率の良い(1)の出力結果配置を算出する

 Alpha Foldは「フリーモデリング」と呼ばれる、類似タンパク質の構造がない場合に、タンパク質の構造を正確に予測する方式に重点を置いています。そのため、より未知のウイルスに対して結果を出すことが期待されています。

 現在、国際的なタンパク質構造予測協議会であるCASPにおいて、SARS-CoV-2のタンパク質構造解明に向けたコンペが行われていますが、2020年7月1日現在1位となっているミシガン州立大学の研究で公開されたソースコードページを参照すると、このAlpha Foldを改良したモデルが使用されていることがわかります。

 AI技術の進歩により、正確なタンパク質構造が今後詳細に解明されていくことで、化合物の探索シミュレーションによる創薬の開発が、より加速すると期待されます。

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診断のためのAI技術

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