製造業などの工場においては、「Cyber Physical System(CPS)」や「デジタルツイン」といったサイバー空間の活用が注目されています。
国内ではコロナウイルスが流行し始めた2020年3月から4月にかけ、大手企業の製造工場におけるコロナ感染が報告されました。工場の操業停止による経済的被害が出る状況は、今後も起こる可能性があります。そういった中で、Cyber Physical System(CPS)やデジタルツインでは、IoTデータを基に工場の状態を可視化して監視するのみにとどまらず、サイバー空間上で解析・分析も行い、現実環境へ結果をフィードバックすることが想定されています。

経済産業省【参考】製造業を巡る環境変化に対する課題と方向性
デジタルツイン空間の構築とAIを組み合わせたサービスはすでにいくつか出てきており、一例としてはCTC社がデジタルツイン構築サービスを発表しています。
このサービスでは、リアルタイムのデータ収集、各種データの前処理から解析までを高速に行うことを可能としており、シミュレーションソフト側でプロセスのモデル化、可視化、レポーティングなどが可能です。
同社は産業総合研究所と協力して、このシミュレータ上の仮想生産プロセスモデルに対し、AI技術(強化学習)を適用したAGV(無人搬送車)の行動を最適化する研究事例も発表しています。
他にも、工場のデータをAI技術でモデル化するデータドリブンのアプローチによってデジタルツイン空間を構築し、最適な制御パラメータを探索した事例や、不動産分野において商業施設における人流量、ビルデータを統合分析することでモデル化(デジタルツイン化のアプローチ)を行った上で、深層強化学習を適用して、空調制御を最適化した事例もあります。
このような取り組みが更に進んでいくことで、将来的には工場や施設への遠隔からの状態確認のみならず、分析や改善のアプローチを安全かつ簡易に行うことが可能となります。結果として生産性向上やSDGsの観点からの省エネルギー化につながっていくでしょう。
今回は、コロナウイルスを契機として広がってくる「働き方や社会変化」に対応するAI技術について取り上げました。次回は、世界的に収束の兆しが見えないコロナウイルスそのものと向き合うためのA I技術の活用について取り上げます。
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