来たるニューノーマル時代では、ネットワークの領域でどのような技術改革が起きるのでしょうか。本連載では、ニューノーマル時代における、場所・時間を超えたコミュニケーションを支える「ネットワーク基盤の技術動向」について紹介します。
第3回では、IoTや5Gなどの通信を支える「エッジコンピューティング技術」について取り上げます。
そもそも、エッジコンピューティングとは?
エッジコンピューティングとは、コンピューティングリソースやストレージリソースを、利用者や端末の近くで提供する技術のことです。IoTや5Gに代表される無線アクセスリモートワークの普及、センサーなどからの莫大なデータ処理や映像通信に代表される広帯域・低遅延通信へのニーズの高まりに対応するため、発展してきました。
エッジコンピューティングは、1990年代にCDN(Content Delivery Network)として映像・音声データを配信先近くで処理したことに起源を持つと言われています。以降、コンピューティングリソースやストレージリソースを、利用者や端末の近くで提供する技術として、様々なユースケースで活用されています。代表的な効能として、低遅延、ネットワーク帯域の節約、自律制御の実現、(ローカルデータ処理による)セキュリティ確保、などが挙げられます。(図1)
図1 エッジコンピューティングの主な効能
“エッジ”の位置については、クラウド近くからエンタープライズの拠点に至るまで、様々な定義が存在します。
例えば、アメリカのITコンサル会社「STL Partners」のサイトでは(How does edge computing architecture impact latency)、ネットワークエッジの位置として、アクセスネットワーク(Level1)〜Peering/Exchange Point (Level4)までを定義しています。一方で、アメリカのIT企業「AT&T」社のホワイトペーパーでは(AT&T Edge Cloud (AEC) – White Paper)では、AEC(AT&T Edge Cloud)、AIC(AT&T Integrated Cloud) Medium、AIC Largeの3レベルを定義しています。
NTT Comでは、エッジコンピューティング基盤を図2のように「アクセスエッジ」と「コアエッジ」に分けて整理し、遅延時間・設備数規模・提供機能など、異なる特徴を持つ多段構成で整備することが有用と考えています。
図2 エッジコンピューティング構成
ニューノーマル時代では、DXが進展し、テレワークの普及も進むため、ネットワークシステム全体の中で必要なデータ処理が拡大・分散していくことが予想されます。これらの変化を柔軟に対応して安心・快適なシステム利用を実現するため、エッジコンピューティング技術の導入やサービスの利用が重要になっていくでしょう。