NTTコミュニケーションズ

Bizコンパス

DXの潮流、CDOの挑戦
2020.08.21

INDUSTRY REVIEW~業界有識者が「DXの現在と未来」を語る第7回

5GやIoTをビジネスにつなげるには、どうすればいいのか?東大・森川教授に聞く

著者 Bizコンパス編集部

ドコモの「アグリガール」は、エンジニアと顧客をつないでいる

――PoCを成功させるために、どのような人材が必要なのでしょうか?

森川:多様性が重要と考えています。たとえばIoTに詳しいエンジニアだけで、本当に顧客が求めている価値に気づくことは難しいです。

 私たちも大学の研究室でPoCをやっていますが、そのチームに、企業で営業をやっている方が入ってくると、「これは何のためにやっているんですか」とか「誰が喜ぶのですか」「顧客は誰なのですか」といった鋭い質問がどんどん出てくるんです。多様な立場から提供すべき価値は何かを見ていくことで、気づけることがあります。

 そのため、現場と本社、エンジニアと顧客をつなぐ人材が重要といえます。例えば、本社主導で工場などのデジタル化を進めようしても、その価値が伝わらなければ現場は反発するものです。PoCの意義や価値を現場に伝える人材を、私は「カスタマーサクセス人材」と呼んでいます。現場のニーズを深堀りし、それを開発にフィードバックできるような人材がいることでPoCの成果は格段に高まります。

 その象徴的な事例として私が見ているのが、NTTドコモの「アグリガール」の存在です。同社では、農業のICT活用を推進するため、畜産農家などに分娩検知などのIoTサービスのメリットを案内する女性部隊を「カスタマーサクセス人材」として編成しています。彼女たちが農家の人たちとコミュニケーションをとりながらテクノロジーの価値を顧客に丁寧に伝えることで、農家からは「便利になった」と評価され、それを開発したエンジニアも報われているわけです。

ベンダーは“パートナー”という意識が必要

――PoCを実施するにあたり「自社内にデジタルのスキルや知見のある人材がいない」ということが多くの企業で課題のひとつとなっています。ユーザー企業とベンダーやシステムインテグレーターが連携してPoCに取り組むケースも増えていますが、このような「共創型のPoC」では何に気を付けるべきでしょうか。

森川:ユーザー企業で意識すべきなのは、そのPoCで得られる価値は「与えられるものではなく、ベンダーと一緒になって創っていくもの」だということです。

 ベンダー側はどうしてもユーザーの要望に応えることを意識します。そのため、ユーザー側は何らかの価値をベンダーが生み出してくれるんだ、自分たちに代わってやってくれるんだという意識になってしまい、「いいものがあれば持ってきて」という感覚になってしまいます。これでは新たな価値を生み出すのは難しいでしょう。

 冒頭の5Gの活用であっても、将来像は未知数です。だからこそ、あくまでも対等なパートナーとしてPoCに取り組むべきです。「一緒に創る」という姿勢が大切になると思います。

――本日はありがとうございました。

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