DXの潮流、CDOの挑戦
2020.05.08
INDUSTRY REVIEW~業界有識者が「DXの現在と未来」を語る第6回
なぜGAFAは優秀なIT人材に“選ばれる”のか?東大・山口准教授に聞く
著者 Bizコンパス編集部
ビッグデータを使えることが、研究者を引き付ける
――そのような状況で、国内企業が優秀なIT人材を獲得するには、どうすれば良いのでしょうか。
山口:たとえば大手企業が「自社が持っているデータを好きに使って研究していいよ」と言えば、非常に魅力的だと思います。
ある大手企業に就職し、研究部門でAI系の研究に携わった学生がいたんですね。その学生は研究に必要な社内データを使わせて欲しいと依頼したのですが、2年待っても結局データを使わせてもらえず、最終的に退社してしまいました。もちろんプライバシーの問題もありますので、なんでも好きに使ってよいとはなりませんが、社内のデータですら解析に使えないことは、研究者として苦しかったのでしょう。
そもそも、日本はデータに関して必要以上に厳しい部分があります。以前、インドの大学に出張したとき、学生が学内・外の道路にカメラをドンと置いて研究のためのデータを取っていたんです。そんなことを日本ですれば、プライバシー保護から問題になりかねないため、なかなか必要なデータを取れない現状がありますが、インドではそうやって自力で集めているんですね。
私は、AIやIoTなどに関わる先端技術研究のほとんどは、データありきだと思っています。どんなデータでもまず取得できることが大切なんです。研究者にとっては、豊富なデータを使えることがモチベーションにつながります。
海外企業では、社内でしか使用しないデータとそうでないデータを明確に線引きしてプライバシー保護などの対策をしながら、データを活用しています。簡単ではないかもしれませんが、国内には世界でもトップクラスの研究所を持つ企業があり、そういった企業が変革に乗り出せば、優秀なIT人材を引き付けていくと思います。