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DXの潮流、CDOの挑戦
2020.04.24

INDUSTRY REVIEW~業界有識者が「DXの現在と未来」を語る第5回

製造業が直面「若手への技術継承」問題をどう解決する?東大・朴准教授に聞く

著者 Bizコンパス編集部

製造業に就職した若手は“ダブルパンチ”で困っている

――「ものづくり白書」で指摘されていた「技能継承」の問題については、どのようにお考えでしょうか?

朴:大きな問題だと考えています。なぜなら、日本の製造業の現場は世代間の人数バランスがバラバラで、若手に技術が継承しにくい構造になっています。

 日本ではバブル経済がはじけた後、20年近く採用者数を控えてきました。そのため高度成長期に入社した50~60歳代の方たちは多いのですが、30~40歳代の方々が少ないです。一方、円安による景気回復によって採用者数が伸びた20歳代は、比較的人数が多いです。

 これまで日本の製造業で広く採用されていた「すり合わせアーキテクチャ」(後述)は、暗黙知の世界であるため、ベテランがOJTで若手に技能を伝承していました。しかし、バブル崩壊後に採用を絞った結果、ベテランが技能を教えようとしても、教える若手がいない状態が発生してしまいました。今は技能を持つベテランがすでに退職し始めていているため、若手が入ってきたとしても、教える人がいない状況に陥っています。

 さらにいえば、現代はものづくりのデジタル化も急速に進んでいるため、若手はそちらの知識も蓄えなければなりません。

 つまり現場を支える若手にとっては、従来の技能と新しい技能を、どちらもイチから学ばなければいけない、ダブルパンチとも言える大変辛い状況にあります。間違いなく、日本のものづくりにおける大きな課題でしょう。

ベテランが持つノウハウは、伝承しにくいことに価値がある

――課題解決の話題に触れる前に、さきほど話題に出てきた「すり合わせアーキテクチャ」がどのようなものか、解説いただけますか?

朴:「すり合わせアーキテクチャ」とは、すべての部品の設計を相互調整しながら、製品を製造することを指します。「インテグラルアーキテクチャ」とも呼ばれます。

 すり合わせアーキテクチャの反対に位置するのが「モジュラー(組み合わせ)アーキテクチャ」です。前もってインターフェイスを標準化しておき、顧客のニーズに合わせてモジュールを組み合わせる作り方を指します。たとえばパソコンも、モジュラーアーキテクチャで作られます。

――両者にはどのような違いがあるのでしょうか?

朴:モジュラーアーキテクチャは、作りやすい反面、真似されやすいという宿命があります。たとえばパソコンであれば、標準化された部品を集めれば、簡単に組み立てられます。そのため多くのメーカーがパソコンを製造できるようになりましたが、逆に誰でも作れることで、付加価値を生み出しにくくなり、結果、価格競争が起きてしまいました。

 一方、すり合わせアーキテクチャは、インターフェイスが決まっていないため、厳密に部品などの組み合わせを調整しなければなりません。

 その代表的な例が自動車産業です。日本にはいくつかの自動車メーカーがありますが、自動車に必要となる部品を組み合わせるインターフェイスは企業間で標準化されていません。昨今、ある程度は標準化する取り組みが進められていますが、すべての部品を業界全体で標準化するという議論は、まだ聞いたことがないです。

 しかし自動車の世界においても、近年、自動運転技術が急ピッチで開発されており、モジュラーアーキテクチャによるものづくりが進む可能性があります。近未来にバッテリーイノベーションが実現するなら、電気モーターで走らせるEV(Electric Vehicle)が主流になり、標準化されたモーターやバッテリーが使われるようになれば、すり合わせアーキテクチャではなくモジュラーアーキテクチャで自動車が作られることも十分に考えられます。

 もしすり合わせアーキテクチャからモジュラーアーキテクチャに変わる可能性があるならば、自社のものづくりにおいて、何がコアであるのかを考えることが、付加価値を生み出すためには重要な鍵となるでしょう。

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