DXの潮流、CDOの挑戦
2020.03.18
INDUSTRY REVIEW~業界有識者が「DXの現在と未来」を語る第3回
「なぜアマゾンやアリババはCXにこだわるのか」立教大・田中教授
著者 Bizコンパス編集部
アリババがDXで、小売業を革新できるのはワケがある
――グローバルでは小売業のDXが進んでいるとのことですが、具体的な事例を教えてください。
田中:昨年7月末に、アリババが買収した百貨店を訪問しましたが、非常にDXが進んでいました。百貨店のビジネスは、テナント企業に対してはB2Bで、消費者に対してはB2Cになりますよね。そのB2Bでテナント企業に対してサポートすべきことは、集客と販売支援の2つが重要な基軸になります。
アリババはオンラインを駆使して、テナントへの集客をサポートすることでテナント企業とオンラインで売上を創出している。自社の強みであるデジタルのインフラによって百貨店をアップデートしているのです。
販売支援の点で、彼らは「ニューマニュファクチャリング(新しい製造業)」をコンセプトに、デジタルインフラによる柔軟な製造システムでの特注品対応や、エンドユーザーのニーズを意識したカスタマイズなどに取り組んでいます。
たとえば、テナントがアパレル企業であれば、アリババがECサイトを通じて集めたユーザー属性によるニーズやトレンドといったビッグデータをAIで解析し、どういった服を作れば売れるのかについて、開発・製造から一緒になってやっています。それによって、アリババ買収前は、4割程度だった「定価販売率」を8割にまで引き上げました。
アリババがなぜこういったことをできるのかというと、ビジネスの土台に「アリババクラウド」というインフラがあり、その上に物流やマーケティングのプラットフォームを構築しているからです。実際、アリババのオフライン店舗は赤字ですが、本業であるECの収益がそれを補う構造によって、ニューマニュファクチャリングなど、DXによる業界構造の改革にチャレンジできるのです。